三話
微かに開いたドアからこちらを見つめている瞳。
晃穂は恐る恐るドアに近づいた。
もう少しで、ドアに手がかかりそうになった瞬間、ドアはバタンと閉まってしまった。
「……」
どうしよう?閉まったということは拒絶されてるということかな?
「すみませんー!開けてくださいー!」
晃穂は声を張り上げ、ドアをノックした。
居留守を使われたら、帰るしかない。
ダメ元で、ノックしてみたのだ。
「何?何か用?」
意に反して、部屋の主はドアを半分開けて、覗きこんできた。
「あ、あの…私、鳴宮晃穂と言いまして」
何を言うか全く考えてない晃穂は、しどろもどろになってしまった。
「用がないなら帰って」
部屋の主はつっけんどんに言った。とりつく島もない。
よくよくつ見たら、部屋の主は小さな女の子だった。
長い黒髪に色白な肌、赤みかかった不思議な瞳をしていた。
お人形みたいにかわいい少女だ。
黒いワンピースを着ている。裾には、白いレースが編み込まれていた。
すごく似合っていた。
「お嬢ちゃん、かわいいね。一人かな?」
笑顔で尋ねるが、これでは不審者だ。
案の定、少女はじっーとこちらを疑わしそうに見つめている。
「ちょっと話したいことあるんだけどいいかな?」
晃穂は少女に聞いてみた。
沈黙が流れる。無理か…。と、思ったが。
「どうぞ」
少女は晃穂が入れるようにドアを開いてそう言った。
「おじゃまします」
晃穂は少女の部屋に入れてもらった。
少女の部屋は一面ピンク一色だった。
ピンクの壁、ピンクの絨毯。ピンクのベッド。
あと、ところせましと、かわいいぬいぐるみと、かわいいお人形が置いてあった。
少女も何とも言えないぬいぐるみを抱えていた。
「かわいいね!ピンクのお部屋だね。ぬいぐるみもいっぱい!」
晃穂は思わず喜んでしまった。
「話がないなら帰ってよ」
とても、つれない少女だった。
「話かー?お嬢ちゃんお名前は?」
「マコよ」
少女はマコと名乗った。
晃穂はさっきから不思議な感情を抱いていた。
マコと名乗る少女と、初対面とは思えないのだ。
どこかで、出会ったような?でも、まったく思い出せない。
それに、何故か少女のことをとても愛しい。抱き締めたくなるほどに…。
「マコちゃんかぁ。かわいい名前だね」
いきなり抱き着いたら、驚くだろうか?
「年はいくつかなー?」
「あんたより年上よ」
「え?年上?」
晃穂は驚いてしまった。どうみても少女は小学生ぐらいにしか見えないのだが。
「子ども扱いしたら、ひっぱたくわよ!」
マコは頭にきてるようだ。
本当に年上なのか?また、冗談を言われているのだろうか?
「そんなことより、話があるんじゃないの?」
マコに言われ、晃穂は何を聞こうか考えた。聞きたいことは結構ある…。