二話
晃穂は見知らぬ部屋のベッドで、休むことにしたが、どうにも落ち着かなかった。
眠ることもできない。目が冴えてしょうがない。
窓がないので、昼間なのか夜なのかもわからない。
自分は本当に死んだのか?
そもそも、ここはどこなのか?
疑問が頭のなかをぐるぐる回り、頭が痛くなってきた。
ここが病室なら、ナースコールがあるはずと、枕元を見たがそんなものはなかった。
なにかあったとき、どうするんだろう。
なにか、少し腹が立ってきたが、どうすることもできなかった。
あと、不思議なのはダンプカーに轢かれた瞬間は覚えているが、その前は何も覚えてなかった。
名前は覚えている。鳴宮晃穂だ。
家の周りはなんとなく覚えているが、自分の両親の顔も自分が通っていた高校も思い出せない。
記憶喪失なのだろうか?
でも、記憶がないことに関しては焦燥感などはなかった。
記憶を取り戻したいとか、そういう考えもなかった。
それが、不思議だった。
普通は記憶を取り戻したいと願うものじゃないだろうか?
いろいろ考えていたら、喉が乾いてきた。
お腹も空いてきた。
ここは食事はでるのだろうか?
お金は持ってない。
鞄も勉強道具もスマホもなかった。
先ほど、金髪の女性からは、ゆっくり休んでいなさいと言われた。
暗にこの部屋から出るなと言われたともとれる。
そんなことはないかな?
晃穂は、そう思ってベッドから立ち上がった。
歩いてみたが、やはり体に異常はない。
ちゃんと二本の足で歩けている。
手も指も普通に動く。
よかった。
この部屋には、鏡がないので顔は確認できない。
さっき、金髪の女性と会ってしまったが、ひどい顔をしてないといいが。
晃穂は意を決して、部屋のドアを開けた。
開けた先には、また真っ白な空間があるだけだった。
真っ白な壁、真っ白な天井、真っ白な床。
無機質すぎる空間。
どうやら、ここは廊下らしい。
廊下は長く続き、先が見えなかった。
晃穂が開けたドアと同じ形状の
扉が等間隔に並んでいる。
一本道で迷うことはないが、延々続く廊下に眩暈がしそうだった。
喉の渇きを癒すものは、何もないようだった。
ましてや、空腹を満たす食料は見当たらない。
部屋をくまなく探せば見つかるかもしれないが、他に住人?がいたらまずい。
金髪の女性が、また様子を見に来るまで待つしかないだろうか?
と、その時、ドアの一つが微かに開いていて隙間から誰かが覗いているのがわかった。
誰だろう?
金髪の女性の他に誰かここにいるのだろうか?
晃穂はそのドアに近づいていった。