5話
おっ? 何か上から降って来てるな。しかも、相当な速さで。避けるのは無理だな。
これはもしかしたら衝突によるダメージで死に戻り出来るかも。
ヒュゥ〜〜〜
ドスッ!
「グベラッ!?」
ぐへっ、胸にクリーンヒットして変な声が出ちまった。ってあれ? HPバーがほとんど動いてない。俺、もしかして死ねなかったのか?
ぐおー、何故だ。あの速さで物が落ちてきたら人間なんか簡単に死ぬはず。
あっ、そういえば、ここでは人間じゃないんだったわ。
あははははっ、......笑えねえ。
そういや、さっき落ちてきたのって何だ? 気配とかから生き物だとは思うんだが、正直俺がクッションになったとはいえあの速さで空から落ちてきてピンピンしてる生き物なんか知らねえんだが。まあ、知ってたら、知ってたで怖えけど。
おっ、動き出した。
「キュ〜、キュ〜。」
なんか可愛い鳴き声だな。
ガサガサッ!
その鳴き声の主が草を掻き分けて姿を現わす。
それは、白い鱗のような物で体が覆われていて、翼の生えたトカゲのような生き物だった。
ドラゴンですね、分かります。いや、そこまで大きくないし、本当に翼の生えたトカゲなのかも。しかし、どうするか? 取り敢えず攻撃してみるか? ログで名前もわかるはずだし。
ぐぃっ
何だ、鬱陶しいな。今、考えごとしてんだ後にしてくれ。
ぐぃっ、ぐぃっ
だ! か!ら!
「引っ張んじゃねえ!!!」
ってあれ? 何かドラゴンっぽいのが悲しげな顔でこっちを見ている。もしかしなくても、あいつが引っ張ってたのか。
「何だ。何かようか? ドラゴンもどき。」
「キュ〜。」
いや、それじゃわからんて。
「お前、プレイヤーか?」
「キュ?」
首を傾げる仕草も可愛いな。ちょっと興奮する。やばい、龍になったせいで特殊な性癖に目覚めたのかもしれん。じゃなくて、こいつはプレイヤーではないみたいだ。ってことはMOBかNPCだよな。どうすんだ、こいつ。
あ、でも、よく考えればこの大きさなら親が一緒にいるはず、......ドラゴンだとすれば。
「親とはぐれたのか?」
「キュキュッ。」
ドラゴンもどきは首を横に振っている。その行為が俺の思っている通りの意味なら、こいつは親とはぐれたわけではないということになる。
「じゃあ、どうして落ちてきたんだ?」
「キュ、キュキュ、キュー、キュキュ。」
なるほど、わからん。
だが、スキルによると今のところ何かが近づいてくる気配はない。大丈夫そうだな。これで問題ごとに巻き込まれたという可能性は大分減った。
で、こいつの扱いだが。
放置でいいな、攻撃してこない限りは。