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雛人形の館'16

作者: 恋住花乃

「今日は雛祭りの日だなぁ。」3月3日、桃の節句である。

只今、絶賛受験中の浪人生である俺は、その日も国立大学後期まで頑張るつもりで大手予備校の自習室で黙々と勉強をしていた。


幼小中高とずっと公立で過ごしてきた俺が、大学で私立になりたくないという変なプライドを持って浪人することにした。

決して楽な道のりではなかった。でも、私立に甘んじる自分を受け入れられなかった。『聖飢魔II』にはお世話になったよ。


高校3年の時、ひたすら頑張った。『聖飢魔II』を聞きながら勉強をしていた。今思えばやり方がまずかったのかも知れない。

『上手くやれ!楽はするな。』と先生に言われたが、俺がやったのは。「楽しろ!上手くやるな」だったのかも知れないな。


そんな事を考えていると眠くなってきたよ。でも寝ちゃダメだ。

先生に怒られる。駄目だ。体が動かないよ。


目の前には白い館…夢の中なのか?ここは。一応、確認する為に中に入ることにした。何処なのか見当をつけなければ動きようがない。

「失礼します。誰かいますか?」ベルを押して呼び出す。

「どうぞ。」玄関を開けてビックリ、白塗りの男がいた。

「貴方は誰ですか?」俺は少々ビビりながら、その男に話しかける。

「麻呂を知らないと心得るか?麻呂は、迫真雛祭部…ゲホンゲホン。内裏将軍だ。今日は桃の節句だろ?まぁ、上がれや。」

お内裏様に連れられ、屋敷の中を歩く。

「こちらが、麻呂の愛しの妻、お雛じゃ。」

「ようこそいらっしゃいました。」お雛は可愛い声で声を掛けてきた。白塗りで顔は分からんが。

「まぁ、そこに腰掛けよ。ピーチティーしかないけど良いかな?」

「あっ、はい。有難うございます。」そこで気付いてしまった。

ここはまずいかも知れないと。

「おい。五人囃子よ。この者にお茶菓子とピーチティーを持ってきてくれ!」良かった。いくら何でもこんな所ではハッテンしないだろう。

「あのさ。屋上あるんだけど、焼いてかない?」何、おいおい!

「まぁ、良いですけど。」ここは了承してみる。どうせ夢の中だ。思惑通りにはいかんだろう。

歩いて屋上に登る。立派な窯があった。

「何を焼く?」てっきり体を焼くのかと思ったが、まさか陶芸だったとは。どうも夢の内容は読めない。


「皿でも焼きましょうかね。」陶芸の心得などは無かったが、楽しむことにした。

しかしそれは突然だった。


大きな怒声が聞こえて目が覚めたのだった。

「お前も浪人生にしてやろうかー!!」そんな声が聞こえた。

ハッとして目を覚ました。目の前には白塗りの男がいた。

驚いてデーモン小暮閣下本人じゃないかと声が出なかった。

「あの、貴方はデーモン閣下ですか?」

「いや、大林だよ。国語科の。予備校の勧誘にこの変装したら逆に逃げられちまった。やれやれだぜ。それより寝ちゃダメだぞ!ここは自習室だ。」

大林先生、デーモン閣下の格好で予備校の売り込みとは。なかなかセンスあるわぁ。


浪人生の館'16=2016年の予備校のとある一風景はこういうものだった。





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