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停滞の賢者  作者: 楯川けんいち
囚われの精霊編
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19話 皇都の訓戒

 エリウセリア皇国の皇都。

 その都の中心には白亜の城があり、大きな防壁に囲まれている。

 防壁は五角形の形をしており、城から各頂点に向かって広い通りが走っていた。

 

 その都では、間近に迫った冬に向けて人々が忙しなく動いていた。

 

 ――動いていた、はずだった。

 

 あるカラッと晴れた天気の日のこと。

 太陽が傾き始めた、昼過ぎ。

 さあこれから日暮れまでひと仕事だ、という頃に。

 

 

 突如、上から押しつぶされるような、途方もない重圧感に都が包まれた。

 

 

 人々は恐怖により、混乱に陥った。

 男も女も腰を抜かし、老人は杖を落とし、子供は泣き叫んだ。

 ――特に、魔術師たちは一様に顔を青を通り越して白くさせていた。

 

 誰も彼も、視界がグラグラと揺れて定まらなかった……。

 その原因は自らが震えているからか、地面が震えているからなのか……それすらも分からぬような状態だった。

 それがどれほど続いたのか……。


 いつしか、重圧感は消え去っていた。

 

 人々にしてみればとても長かった気がしていたが、終わってみればそれほど時間が経っていなかった……。

 そして外にいた者たちは、ふと周りを見回すと驚愕した。

 

 先ほどまで、あるはずのなかったものが目に映ったのだ。

 

 ――それは、陽の光を浴びて、キラリと輝く巨大な柱だった。

 

 皇都を囲む防壁に届くかというほどの高さがあり、しかも向こう側が透けて見えるほどの透明さをもった美しい氷の柱。

 突然に、そんな氷柱が二つも現れたのだ。

 

 人々は、またしても混乱する。

 しかし恐怖はなく、その不思議な光景にただただ呆然とするのだった。

 

 そしてそのうちに氷柱が生えた場所に人が群がり始め、そこで見たものが口伝てに知れ渡っていく。

 すると柱のなかに氷漬けになったものが、人々の知るところになった。


 一つは、ある老舗の大商会の本店。

 もう一つは、その商会の会長一族の屋敷。

 

 この大きな都で、関連深い二つの土地が氷に閉ざされる。

 これは偶然ではない、と人々の間に様々な憶測が立った。

 

 ある者は天罰だといい、ある者は禁忌の魔法に触れたのだといい、ある者は精霊様のお怒りだといい、ある者は…………。

 

 あれこれと、確証などまるでない噂が流れた。

 しかし人々はその不可思議な現象の真相に、たどり着くことはないのだった。

 

 

 その氷柱は、氷であるはずなのに、氷ではなかった。

 触れれば冷たいのに溶けることはなく、どんな鈍器を打ち付けようと砕けることもない。

 氷柱は何年経とうが、そこにあり続ける。



 皇都の人々は――あれは何だったのだろうかと――首を傾げながらも、それを受け入れて生活を続ける。

 いつしか、二つの氷柱は皇都の当たり前の光景になっていた。

 

 皇都の人々は、初めて皇都にやってきて氷柱に驚く者を見ると語り出すのだ。

 この氷の柱は昔、突然と現れた――と。

 

 そうして、その不思議な氷柱はいつまでも、いつまでもそこにあり続けるのだった。


 ――その透き通った氷の中に、ある者の戒めを飲み込んだまま。

 


 

 



迷ったけど、書いたちゃったものは仕方ない。

これからも拙作をよろしくお願いします。

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