コンタクト
『ファラオって名前を仮に付けたの。ちょっと聞きたいんだけど、スフィンクスの子猫って三日とかでこんなにずんずん大きくなるのかなあ?」
ヨーコからのメールが届く。ササキが添付画像を開くと三日前より明らかに大きくなっている子猫がいた。普通ならばここまで大きくなるのに半月はかかるだろうという、大きさで、もう、普通のドライフードを与えてもいいかもしれない大きさになっていた。
ササキはまずいな。と思った。そして同時に早く人員を確保して宇宙生物を回収せねばならない、と思案する。
人員の確保は本部に申請してあるが、ここ数日、同種と見られる宇宙生物の目撃情報が増えていて、対応に追われているので、所在が確かなファラオは放置されていた。
それほど巨大になったり、攻撃性の高い生物ではないことは以前の研究で発覚しているが、知能がすぐれているらしい。
ヨーコがこれ以上怪しむ前に、何とかして預かるしかない。ササキはヨーコに出す返信メールの内容を考える。
できれば、獣医兼宇宙生物研究の施設に連れて行きたいのだが、ヨーコには獣医の親戚がいて、それは柔らかく断られている。
一般の獣医がどう判断するかという点にはさほど問題がないといえばないが、猫としての思い込みがあればということが前提だ。
一人暮らしの女性宅に押しかけるのもどうかと思うし、可愛がっている生き物を突然宇宙生物だと主張したとしても信じてくれる可能性は低い。せいぜい電波な人間だと思われて、接触が取りにくくなる。
しかし、宇宙生物研究は警察との連携は過去の軋轢があるため、空き巣に見せかけて盗み出すこともできない。
やはりここはヨーコと比較的接触の取りやすいササキが様子をみにいくしかないか……。
ササキが頭を悩ませていると、携帯電話がけたたましく鳴った。発信者は研究所だった。
「ササキ君、トラウラさんのところへ回収要員を向かわせる。君は引き続き新たに飼育用品を揃えたりする人間を報告してくれ」
事務的な口調で電話は伝えた。
「了解です。トラウラさんは回収対象に思い入れがあるようなので、くれぐれも慎重にお願いします」
ササキはほっとしたような、少し心配なような心もちになった。




