異星
「な、なあ〝、んー」
言葉が出ない。彼が声帯を振るわせようとしても、唸り声や嗚咽に似た音が出るばかりだった。
空気は探査機の調査で得られた通り、彼のの住んでいた星と変わらないはずだ。ひょっとして違う星に着いてしまったのだろうか。
彼は緊急ハッチの中を見回す。見慣れた備品はやけに大きく、見慣れぬ布が彼の体を包んでいた。
(捕まってしまったのかな)
しかし、布は彼を拘束するものではなかった。ハッチの上を見るに解放されているように思う。
ただし、壁が異様に高い。
(訓練された俺には関係ないけどね)
彼は布から抜け出して、構えを取る。
ばねのように体を縮め、一気に開放する。
見事なジャンプが決まった、そう思ったのもつかの間想像以上に壁が高い。
(ぶつかる!)
壁にぶつかる衝撃は想像以上に軽い。いや、違う。壁が倒れる!
大きな音と共に床になった壁に彼は打ち付けられた。
鍛えているから大丈夫と自身に言い聞かせながら、よろよろとハッチを出るとそこは、どこか人工的に作られた場所のようだった。
彼は、やはり捕まったのか、それにしても大きな空間だと考えながら、辺りを見回す。すると彼の使っていた電子端末機器を発見した。
(これは俺の……奴ら、これが何かわからないから、放置していたんだな)
まだ見ぬ異星生物に彼は思いをはせる。しかし触ろうとして彼は気づく。
端末はこれほど大きかっただろうか、と。
起動前の端末機器の液晶が映し出す姿を見て驚愕した。
(俺、小さくなってる!?)
子供の頃の画像によく似た彼が画面の中で驚いていた。
(と、とにかく状況を把握しなくては)
彼はこの閉鎖空間の探索を開始した。




