超光速跳躍
「これより天の川銀河、太陽系まで超光速跳躍を実行する。なお、事前の無人探査機によって第三惑星に我々と類似の生物が存在していることは周知のことと思う。くれぐれも接触は慎重に行うこと。あくまで目的は調査である。我々が有利であることを確認できた場合のみ本部と通信の上、本格的な移住を開始せよ」
「了解」
「超光速跳躍モード起動。跳躍可能まであと五分。跳躍モードの関係により、通信は通常航行モードに移行するまで断絶する。手順を最終確認のうえ発射に備えよ」
「了解」
司令官との通信が切れ、宇宙艦内は少しの安堵と緊張が同居する。
「異星生物との接触かあ」
「ドキドキするな」
「跳躍技術が進歩したとはいえ、これほどの長距離跳躍は初めてだからな」
「前回は中継地があったんだっけ」
「ああ。俺も緊張してきた」
艦内の仲間は口々に言いながらマニュアルの最終確認を行う。特に命綱でもあるベルトとハッチの確認には細心の注意を払っている。
「超光速跳躍まで三十秒」
システムの抑揚のない声が響き、艦内は静まりかえった。
「十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、跳躍します」
低く唸るような機械音と共に艦内の重力がなくなっていき、ぐらりと体を置いて精神が先を行く。
彼らの乗った宇宙艦は、一瞬の揺らぎと共にとある銀河から姿を消した。




