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「そんな……」
言魂使いは、なぜ、悪いことばかりに力を使うんだ!?
ディアは言った。
「最近の協会は不穏でな。オラルメンテ認定協会創設当時は善徒派の者が多かったのだが、近頃はまるで違う。人の命や精神を殺すような任務ばかりになった。それを見ていられなくて、私は、協会の仕事をするフリをしてさりげなく内部事情を聞き出そうとした。しかし、ガードが堅くて、これといった情報は得られなかった。
お前の親友を襲撃した時も、私は、あの者を殺すつもりはなく、気絶させただけ。永音があの者と和解した時はホッとしたぞ」
「そうだったんだ……」
たしかに、響は無事だった。
ディアは、ただお金のために悪いことをしてるわけじゃなかったんだな。人の命を、大切に考えられる人なんだ。
「ミーもそれを信じるなり」
タマが言った。
「ディア氏が響君を襲った時、ミーは、不自然だと思ったなりよ。ディア氏くらい強い魔術を使えるなら響君を即死させることもできたはず。それなのに、ディア氏は永音氏を狙った。あれは、瑞希氏が助けにやって来ると分かった上での時間稼ぎだったなりね」
「そうだったのか?ディア」
「そういうことだ」
俺の手から自分のスマホを受け取り、ディアは言った。
「瑞希が私に“あの仕事”を辞めろと言ったのは、そういうことだったんだろう。誉められた仕事ではないからな」
「うん……。でも、ディアは悪くないと思う!危ない目に遇いそうな人を助けようとしてたし!響のことだって見逃してくれた」
「……嫌われるのには慣れていたが、悪人呼ばわりされるのは正直つらかった。話せてよかった。今のこと」
ディアは目を閉じ、柔らかく笑う。
「協会も、前はあんなんじゃなかったのにな。私達に流れてくる裏稼業も、気楽に行える単純作業ばかりだった。
……と、こんな話をしたところで何の手がかりにもならないかもしれないが、協会の裏切り者について、少しでも繋がる情報であればいいなとも思う。そいつが、協会の雰囲気を変えたのかもしれないし」




