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ディアのやってた裏稼業は、言魂使いの願い達成の手助けだった。ということは、これらのメールに載っている『依頼内容』は、どこかの言魂使いが口にした望みなんだ。俺と同じ力を持った人間が願ったこと……。
「ディアは、今までに何人かの人を殺してきたの?」
尋ねる声が震える。否定してほしい……!!
「『殺し』はしない。私は、手抜きして稼ぎたかったからな」
「本当に?」
「ああ。そのメールを見たらとても信じられないかもしれないが、俺は人を殺めたことはない。
協会の…言魂使いの願いを叶える手助けなんて、いくら仕事でもやる気になどなれなかった。どいつもこいつも、人の命を何だと思ってるんだ、と、何度苛立ったか分からない。特に、言魂使いの連中は……」
「タマに聞いたんだけど、やっぱり、全体的に悪い言魂使いの方が多いの?タマの話と違って、瑞希ちゃんは言魂使いを尊敬してると言ってたんだけどな……」
良い言魂使いは、どこにもいないのか?力を手にすると皆悪くなっちゃうのか?瑞希ちゃんの話は、俺への気遣いから出た嘘だったりするのか?
グルグル頭を回る俺の思考を見抜いたみたいにディアは言った。
「あの言魂使いを導く者の話も真実だろうが、瑞希の話も本当だろう。
彼女の先祖は、言魂使いといっても、私の言う悪徒ではなく、善徒に導かれたと聞いている」
「ぜんと?」
「善徒は、言魂の力を清い心の元で使う言魂使いのことを言う。
昔は善徒も多かったのだろうが、人は人ゆえに悪に染められやすい弱さも持ち合わせている。それだけに、悪徒だらけの嫌な世の中になってしまったんだろうな。特に、高レベルの言魂使いは自分を神だと思い込み、平気で人を殺そうとする。
連中のそんな思考が嫌だった私は、任務対象の人間が少しでも長生き出来るようにしていた。おかげで仕事量は減ったが、他の仕事で食いつないでいた。
放って私が手を下さなくても、言魂使いに目をつけられた者は必ず死んでしまう。そうでなくとも、確実に酷い目に遭う」




