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「これは、私達の世界で通信用端末として使われている。日本で言うところのスマートフォンと同じような物だ。メールも打てる」
たしかに、超薄型の最新スマホと表現してもいいくらいだ。
ディアに頼んで少し触らせてもらうと、俺のスマホと変わりなくメールボックスや文章作成画面も出てきた。
「すごい!っていうか今さらなんだけど、ディアの国でも日本語を話したり書いたりするんだね」
メールの文は俺のよく知る日本語で打ってある。それに、ディアと俺はこうして普通に会話できている。よく考えたら、瑞希ちゃんだってそうだ。
異世界のスマホ(勝手にこう言わせてもらう)と異世界人なのに、それってすごすぎる。
「そうだな。お前が疑問に思うのも当然だ」
ディアは言った。
「我々の星には、他の惑星に行く際、生き延びられるように、行く先々の言語に順応するための他星適合法力を受けなければならないという法律がある。このカード型通信端末にも、自分の居る場所の言語に自動変換させるチップが内蔵されている」
「つまり、フォントオーディスの言語で打たれたメールも、日本に来た瞬間、日本語で表示されるってことか。そのためのチップが、このカード端末に入ってる、と」
「そういうことだ」
俺は、自分の手に持ったディアの異世界スマホをまじまじと見た。軽いのに、値段は相当高そうだ。
うっかり落として壊したら大変だ。自然と、慎重な扱いをしてしまう。
「その端末は比較的安価だが、他星適合法力は国家の魔法使いにやってもらわなきゃならないから高くつくんだ。月収×3の費用がかかる」
「その他星なんとかっていうのは魔法のこと?」
「そうだ。半永久的に持続する強力な魔法だ」
「月収の3倍もするなんて……!」
俺は頭の中で計算した。給与の額は人によって違うんだろうけど、とりあえずここは身近な大人をモデルに考えてみよう。
母さんの給与が一ヶ月分でだいたい25万前後。その3倍というと……。およそ75万円!?プレステ3と最新のパソコンを同時に買ってもおつりがくるぞ!!
「ディアと瑞希ちゃんはその魔法を受けて日本に来たから、俺ともこうして日本語で話せてるんだな……。高いのに、迷わなかったの?」
「正直、痛い出費だった。貯金のほとんどが無くなってしまったが、必要経費だしな。やむを得ない。それに、働いていればまた貯められる。便利屋をやる以上、人としゃべらないワケにはいかないからな。
それより、ここを押してみろ」
ディアのスマホ。メールボックスを数日前まで遡って表示した。
「ここ、分かるか?」
約一ヶ月前のメールを開いた。協会の某がディアに送った、裏稼業の指示メール。
「文章の最後に、Sと書いてあるだろう?」
「ホントだ。差し出し人の名前?イニシャルか、コードネームかな」
「多分な。私に仕事を流していたのはこの人物だ」
「他のメールも見ていい?」
「ああ。そのフォルダは仕事関係のメールしか入ってない。好きに見ろ」
ディアの見せてくれたメールには、仕事の予定日や集合場所、任務の遂行期限などが記されていた。
それはまだ良かったが、任務内容の文章に俺は絶句した。
《×××の××という者を抹殺。苦しめてから実行するように》
相手からしたら殺されるだけでも怖いのに、その前に苦しめるだって!?




