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瑞希ちゃんが毒薬?
「それはないよ。今は、人のつらい記憶を和らげるための薬を作りたいって言ってたし」
ただでさえ、魔法薬の調合は難しいと聞く。他事を考える余裕なんて、彼女にはナイはずだ。
「ミーも瑞希氏がおかしいとは思わないなり。たとえ失敗作が毒薬だとして、それを彼女がビンに入れていたとしても、そこに悪意はないなり。瑞希氏にとって、失敗ゆえに完成した毒薬の存在は事故みたいなもの」
「うん、そうだよ。瑞希ちゃんはわざと悪い薬を作るようなコじゃない。困ってる人のために薬を作りたいって思いながら動いてる」
なのに、この胸のモヤモヤは何だろう。彼女のことを信じているのに、タマの言葉がやけに引っかかる。
「今後も周囲の人間に警戒しろと言いたいところなりが、永音氏はもう充分、言魂使いの自覚を持ってるなり。ミーはあまり口うるさく言わないことにするなり」
「そうか?別にいいけど、タマが何も言ってこないなんて、それはそれで調子狂うかも」
「言魂使いを導く者も、サボりたい気分になることがあるなり」
「よく言うよ」
最初あれだけ口うるさかったクセに、口出しされなくなったらなったでちょっと寂しいじゃないか。
「どうしよっかなぁ。人助けの件……。俺には荷が重いなぁ」
「嫌なら嫌、やりたいならやる、それだけなり。何を迷う必要があるなりか?自分に与えられた能力をプラスに生かせる良いチャンスだと、ミーは思うなりが」
「本当に、そうかな?」
俺は、この力で親友を消そうとした男なのに。
「自分で考えるなり。ミーは知らないなり」
「チェッ、冷たいの」
両手を頭の後ろで組み、俺は考えた。
人助け、かぁ。今まで、助けるってより助けられる側の人間だったしな。響に助けられ、瑞希ちゃんに助けられ。
助けるってどんな気持ちなんだろう。人の悩みを軽くするって、どういう感覚なんだろう。
「まだ悩んでいるみたいだな。ホント、珍しいな。言魂使いのクセに能力を使わず自力で考えるとは」
「うわあぁ!!」
扉という扉は全部閉めてあるはずなのに、どういうワケか、ディアがソファーに座って足組みし、こっちを見ていた。窓の鍵も閉めてるのに、どうして!?




