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「あの時は何が起きたのかよく分からなかったが、今思えば、彼女は魔法使いに違いない」
末森さんは言った。
「何らかの理由で、彼女は日本に滞在していた。あるいは、自国を抜け出し自由気ままな旅を楽しんでいたのかもしれん。ワシら一般人が知らないだけで、日本にも魔法使いという種族が存在しているのかもしれんしの。
彼女の素性が分からない以上、様々な想像が働くが、まあそれは置いとくとして。
とにかく、ワシはその時、強く思ったんじゃ。もし今度彼女に会ったら、必ずや恩返しをするんだ、と」
末森さんは瑞希ちゃんを見る。
「結局、あの時の魔法使いには会えていないけど、見ず知らずのワシなんかに優しくしてくれた彼女のことを想うと、ワシは自然と、君達を助けたくなるんじゃ。
瑞希ちゃんに出会えたのも、昔会った魔法使いの彼女のおかげかもしれんのぅ」
末森さんが俺に声をかけてくれた時、最初は怪しいと思ったけど、そんな話を聞いた今だから分かる。人に親切にするのに、理由なんていらないんだ。
末森さんも、キッカケは魔法使いに助けられた事なんだろうけど、瑞希ちゃんやディアの力になりたいと思う今の気持ちは本物なんだと思う。
ディアは気まずそうに目を伏せ、
「すみません。どうも私は疑い深い性分で……。失礼なことを言って、申し訳ありませんでした。日本に味方がいることは、私としても非常に助かります」
「いやいや、気にせんでくれ。この格好じゃしのぅ、怪しまれるのには慣れとるから」
本当に、全く気にしていないらしい。末森さんは黒衣装をバサッとはためかせ、ディアに手を差し出すと、握手を求めた。ディアも、それに応える。
ディアは少し考え過ぎるところもあるみたいだけど、悪い人じゃない。末森さんはこの通り心が広くおおらかな人だし、二人はきっと上手くいく。




