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ディアにとっては、魔法使いが異世界の人間に素性を明かすなんて信じられないことらしい。
ディア自身、たとえ日本に移住することになっても、自分が魔術師であることは隠すつもりだと、さっきチラッと言っていたしな。あくまで『普通の人間』として、便利屋稼業を営む、と。
しかし、末森さんの前でだけはそんな慎重さや警戒心はいらないらしい。
瑞希ちゃんは朗らかに言った。
「ディアさん。末森さんは、他の方とは少し異なる考えを持ってみえます。私達のことを知っても、決して排除しようとはしません。日本に来て初めて、私の目標を理解し、占い用にこのお店を貸して下さったのは末森さんなのです。低レベルの魔法しか使えない私がここまでやってこられたのは、末森さんのおかげなのです。もしも私一人だったら、今の生活は成し得ませんでした」
「そうだったのか。この店は、その人の……」
ディアは末森さんに一礼し、自己紹介をした。
「瑞希が大変お世話になっております。さきほど彼女が言っていたように、私はフォントオーディス出身の人間で、名をディア=ラルと申します。少々こちらで食事をさせていただきました。すぐに片付けます。すみません」
空になった全員分の皿をカウンターのシンクに持っていくディア。弾かれたように、俺もそれを手伝う。テーブルはすぐに元通りになった。
「お客さんなのに気を遣わせてすまんのぅ。しっかりしたいい青年じゃ」
末森さんはすっかりディアのことを気に入ったらしい。
そんな末森さんに、瑞希ちゃんはひととおりのことを話した。俺達がさっき話していた、ディアのこれからのことを。
「そうかそうか……。どこの国にも、悪者は存在するもんじゃのう」
憂いた声で、末森さんは言った。
「ワシには、君達の住む国のことはよく分からん。どうしたらオラルメンテなんとか協会とやらの裏切り者を探せるのかも、考えつかない。だが、応援はさせてくれ。君達を見ていると、ワシは協力せずにはいられない」




