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自分の経験を重ねつつ、俺は言った。
「正しいことをしたい、悪いことはしたくない。そう思っても、環境がそれを許してくれなくて……。変えられないでいるうちにどんどん深みにハマるというか、悪循環になってて」
ディアも、自分なりに色々考えたに違いないんだ。生きていくために。魔術師として生活するために。
「ディア。日本に住まない?今の仕事辞めてさ」
俺は提案した。
瑞希ちゃんだって日本に来ている。だったら、ディアだって、異世界の故郷を離れて日本に住んでもいいはずだ。
でも、ディアにとっては突拍子もない発言だったらしい。彼は声を裏返して、
「何を言っている!?私の話を聞いていたのか?
私は魔術師だ。瑞希とは違う。水晶玉ひとつで占いをし稼ぎを得ている魔法使いと比べたら、その能力は雲泥の差がある。日本に来たところで、笑い者になるだけだ。その上、稼げる見込みもない。リスクの高いことに手を出すほど、私は身の程知らずではない」
今までだったらすんなり受け入れてしまっただろうディアの言葉を流す。
「ディア。よく考えてほしいんだ」
俺はまっすぐディアを見る。
「瑞希ちゃんに対しても思ったんだけど、ディアは日本の人達にはないすごい力を持ってるんだよ!ディアの国では魔術師がひどい扱いを受けてるみたいだけど、それはあくまでその国の話。日本の人は、魔法も魔術も見たことがないんだよ。自分の意思で風を操ったり、敵を攻撃したりなんて、皆できない。もちろん、俺も。
瑞希ちゃんとディアは、俺達地球の人間から見て、ずば抜けた力の持ち主なんだよ。その力を、日本で活かすのはどう?
普通の人が大変に思うことを、代わりにやってあげるような仕事とか!
魔術師のディアなら、すぐに大勢の人から依頼が来ると思うんだ」




