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「そうだな」
やけにすんなり、ディアは返事をした。
「詳しくは話せないが、今まで、仕事中に死ぬんじゃないかと思ったことは何度もあるし、命の危険は常に感じている。でもな、背に腹は変えられない。
君も、フォントオーディスの人間ならそれくらい理解できるだろう?
生まれつき能力の高い魔法使いや言魂使いは仕事に困ることはなく、むしろ、半年ばかり遊びほうけて気まぐれに短期の仕事をするという生活をしても食べていける。その陰で私のような魔術師達は住む場所にも困る有り様だ。
君は昔、私のことをこう言ってくれた。強くて優しくて素晴らしい魔術師だと。将来は、私の父のように様々な研究で成果をあげて揺るぎない地位を築くに違いないと。でも、現実は違うんだ。
私の能力は、魔法使いの君や、人の命運を言葉ひとつで操る言魂使いの足元にも及ばない。
能力に恵まれた者は、魔術師の事を捨て駒にしか思ってない。
汚い仕事は私達下賤の者にやらせたがる。金を積まれて奴等の依頼を断る魔術師などいないからな。
私はそういう輩が大嫌いだが、生きていくため、こちらも奴等を利用する。それだけだ」
そうだったのか。ディアが、俺に対しやたら冷たかったのは、嫌な言魂使いにばかり出会ってきたからなんだ……。そんな厳しい状況の中にいたのに、俺は分かった様な事ばかり、ディアに言ってしまったんだな……。
不登校だった頃、響に正論でぶつかられて傷ついたクセに、全然分かってなかった。
「ディアの言いたい事、何となく分かる。いや、分からないんだけど、分かる」
「何が言いたい?」
ディアが、暗い瞳でこっちを見る。
「俺、ワケあって学校に行けなかった時期があるんだ。もう大丈夫になったんだけど……。だから、今の状況をどうにも出来ないディアの気持ち、分かる気がする。
頭ではダメだって理解してるし気分も乗らないんだけど、でも、今、どうしようもないんだよな?」




