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「あ、いい具合に焼けました」
オーブンで加熱させておいたハンバーグを見て、瑞希ちゃんが頬をほころばせた。
ディアの空腹も、これで落ち着くかな?
カウンターから店内に漂うハンバーグの良い薫りに、俺も思わず唾をのんだ。
「遠慮なくいただくぞ!」
瑞希ちゃんに起こされると、死んだように眠っていたディアは瞬時に起き上がり、彼女が各自に盛り付けたハンバーグとクロワッサン、グリーンサラダ生ハムのせを交互に食べ始めた。すっごい食欲!よほど腹が減っていたんだな。
ディアの手は止まることを知らない(タマですらまだ爆睡中だというのに)。
どう噛み砕いてるのか知らないが、毎秒何かを口に入れている敵対魔術師。それなのに下品に見えない不思議。
ディアの今の様子を『ガツガツ』というオノマトペで表現するのが間違っていると思ってしまうのは、彼の端正な容姿に重なり、その指先や口の動かし方がいちいち美しいからなのだろう。
俺と響を襲ってきた時は獲物にありつけないでいる狼のような眼光を放っていた切れ長の目も、今は、夕焼けの海とかで黄昏てそうな無害な美少年みたいに穏やかだ。
たしかディアは、瑞希ちゃんより三つ年上だって、彼女は言っていた。ということは、十七歳。俺と二歳しか違わないのか。
神様は不公平だよな。
二年後、俺は十七歳になるが、こんな無駄に色気を放ったイケメンにはなれないだろう。
クソォ、優美な雰囲気を纏いやがって~。襲撃モード時とギャップありすぎだろっ!
食べるのに夢中だったディアは俺の視線を察知した。箸で切り分け中のハンバーグに目を落としたまま、
「さっきからどうした。私の顔に何か付いているか?」
「いや、別にっ」
俺は慌てて自分のハンバーグに目をやる。異世界出身の魔術師観察をしていたせいで、全然手をつけていない。
ディアはムッとした顔で、
「なんだ。私のハンバーグ欲しさに見つめてきているのだとばかり思ったが、まだ自分の分が残っているではないか。ったく、言魂使いは卑しいヤツばかりだな」




