◆
「それにしても、ハンバーグなんて、用意がいいね」
しかも、冷凍とはいえ、評判の良い店の物をあらかじめ買っていたなんて。俺は瑞希ちゃんに感心した。
彼女はうなずき、
「幼なじみですから」
なるほど。そうだよな。
瑞希ちゃんはディアの幼なじみだって話だし、それなら、好みや性格を知っててもおかしくない。
俺と響が、ユイのBL好きを理解してたようなものだよな。
分かっているのに、ディアのために食事の支度をする瑞希ちゃんを見て、ちょっと妬いてしまった。
「永音さんにも食べていただきたくて、あえて多めに注文しておいたのです」
ハンバーグを用意しながら微笑む瑞希ちゃんに、俺は不覚にもときめいてしまった。つい先日までユイがユイがと言ってたのに、なんてふしだらなんだ、俺は。
「ありがとう。何か手伝うよ」
店の奥にあったブランケットを床で爆睡中のディアにかけると、俺は瑞希ちゃんを手伝うことにした。
いつもいつも、お茶やお菓子をごちそうしてもらってばかりで申し訳ないしな。これくらいやらないと。
「アイツ、うるさいなり。安眠妨害なり」
ディアのわめき声で起こされたらしい。テーブルの上に居たタマはうんざりした顔でうなだれた。
「ごめんな。ディアはすぐに寝ちゃって、ご飯までは起きないだろうし、タマももうちょっと寝てていいよ」
「すみません、タマさんにまでご迷惑をおかけしてしまって……」
俺達の言葉に、
「ふぅ。わかったなり。もう一眠りするなり」
そう返したかと思えば、タマは俺のスマホごとこっちに向かって飛びはねてきて、カウンターの上に置かれたビンを床に叩き落とした。落下の衝撃で、ビンは割れてしまった。
「タマ!どうしたんだよ、急に!」
辛辣な言葉を吐くことはあっても、こんな風にオリンピック選手も目をむく素早い動きを、タマはこれまで見せたことがない。
何があったんだ?どうしてこんなことを……。




