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店に入ると、
「永音さん、今、お茶を淹れますね。タマさんもゆっくりしていって下さい」
こちらがホッコリしてしまう笑顔で、瑞希ちゃんが声をかけてくれた。
「ありがとう。でも、タマはまだ寝てるみたい」
導く者にも睡眠は必要みたいだ。
タマは、ディアの件以来、瑞希ちゃんの前でだけ、しゃべるようになった。
最初タマは彼女に警戒心を抱いてたみたいだけど、俺や響を助けてくれた彼女の言動に感謝し、今ではすっかり心を許したらしい。
俺はいつもの席に座る。初めてここに訪れた日に何となく腰をおろした席が、店内での俺の定位置になっていた。
水晶玉のそばに、タマの付いたスマホを置いた。
瑞希ちゃんの淹れてくれたアイスミルクティーを半分飲み終えると、俺は、正面の席に着席する彼女を見た。
「じゃあ、ディアを呼び出してみるね。意識して言魂の力使うの初めてだから、うまくいくか分からないけど」
「永音さんなら大丈夫ですよ。信じています。どうか、よろしくお願いします」
祈るように両手を組み、かたく目をつむる瑞希ちゃん。
彼女は、自分のコップに全く口をつけていない。それだけ、ディアのことで胸を痛めていたんだろうな……。
「じゃあ、やるね」
緊張、不安、期待、希望。色んな感情が混じる中、俺はテーブルの上で両手を組み、
「異世界フォントオーディスに住む魔術師――ディア・ラルをここへ呼んで下さい……!」
心を込めて言葉を紡いだつもりだ。どうか、叶いますように。
祈るような想いで店内に視線をさまよわせると、
「永音さん!」
瑞希ちゃんが、俺の後方にあるレジを指差した。
放射線状に放たれた白い光に包まれて、ディアが姿を現した。




