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「マジか!夢か……」
響はつぶやく。
「そう言われると、そんな気がする」
「急に倒れたから、こっちはビックリしたって。貧血なんて珍しいよな。響のことだし、夜遅くまで勉強やってたんじゃない?」
「うん、そうだな。最近、寝る時間削って、ついつい予習とかしちゃうからな」
渡り廊下で話していたら、響は突然貧血で倒れた。そういうことにしておいた。
普通なら無理のある説明だが、それを信じてほしいと願う俺の能力が働いてくれたらしい。
「寝不足はダメだよな。それだけじゃなくて、永音が学校に来てるの見てパニックになったのも大きかったかも!」
響はアッサリ騙されてくれた。
巻き込んでごめんな。
心の中で謝っていると、響は思い出したかのように真面目な顔つきになった。
「永音が学校来なくなってからすぐ、永音にメール送ったんだけど、送信エラーで返ってきた。その時はすごいショックで、一方的に関係を切られたことにムッとしてた。どうして何も話さず拒否するんだ!?って」
「そうだよな。ごめん。あの頃は、誰とも関わりたくなかったんだ。アドレス変えたのも、勢いっていうか……。後先考えない衝動的な感じで。自分でも、やり過ぎだったと思ってる」
そのせいで、ユイと響は、毎朝、昇降口や俺んちの前で俺を待ち伏せすることになった。
「でも、永音にそうさせたのは、俺にも何か原因があると思った」
響が言った。
「永音に嫌われること。黙ってアドレス変えてしまうくらい、学校休んでしまうくらい、傷つけたこと。ユイの件が原因だと思った」
「うん……」
「永音。俺、ワガママなんだ。ユイと永音、どっちも失いたくない。今までみたいに、俺と仲良くしてほしい」
「響……」
渡り廊下での話の続き。ディアに邪魔されて、まだ、響とちゃんと仲直りできてなかった。
「俺が学校休んでる間に、響とユイは付き合い始めてると思ってた」
俺は胸の内を語る。
「それが、響の気持ちだったんだな。不登校になったからって、俺のことをないがしろにしなかった。そんなに気にかけてもらえてるとは思ってなかった」
「ちゃんと、永音が納得してくれるまで、ユイのことは置いておくべきだと思ったんだ。永音の気持ち無視してユイと付き合ったら、もう一生、永音とは仲良くできなくなる気がして、恐かった……」
もういいよ。充分だよ、響。俺との友情を優先させるあまり、昔から好きだったユイのこと、保留にさせてしまったんだ。
俺、大人になる。
「ユイと、付き合うの?」
「うん。そうしたい」
響は申し訳なさそうにうなずいた。
二人のこと、納得したのかしてないのか、俺自身分からない。
そもそも、最初からあっさり納得する失恋なんてないと思う。それだけ、本気で好きになった相手ならば。
でも、俺が響にかける言葉は決まっている。
「ユイが決めたんだ。俺には割り込む隙なんてないよ」
たとえ、どんなに、ユイを好きだとしても。




