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瑞希ちゃんの話は複雑だけど、でも、何となく分かった。
ディアは魔法使いに憧れ、魔法使い的な能力を持つ魔術師になったが、魔法使い達に片っ端から職を奪われ、自分の仕事が見つけられなかった。
そこで、オラルメンテ認定協会の誰かからこっそり仕事を横流ししてもらうことになり、今に至る(ディアがオラルメンテ認定協会とコンタクトを持つまでの成り行きは不明)。
ディアに仕事を横流ししているのは、本来その仕事をこなすはずのオラルメンテ認定協会の魔法使いなんだと考えていいだろう。
今回響を襲ったのも、そんな裏家業で稼ぐため……。雇われた以上ミスはできないから、ディアはあんなに必死だったんだ……。
瑞希ちゃんは、ディアの幼なじみとして、彼にまともな職を見つけてほしいと思ってる。それは分かる。昔のディアを知ってるから、なおさら、悪いことから足を洗ってほしいと願う。当然だ。
もし、響やユイが犯罪に手を染めようとしたら、俺は全力で止める。
だから、タマの言うことももっともだ。でも……。
「だいたいのことは分かったけど、ディアを処罰するのは待って!」
俺はタマに言った。
「ひとつだけ分からないことがあるんだ。
言魂使いの願いを叶える手助けをしてるのは、基本的にオラルメンテ認定協会の魔法使いだけ。その人達が、言魂使いの言葉を実現化する手助けをしてるんだよな」
俺みたいな人間が何かを願うたび、こっちからは見えないところで顔も知らない異世界の魔法使いが動いてる。
「それは分かった。でも、それって、そんなに重要なことかな?
ディアみたいな魔術師が仕事手伝ったっていいじゃん。『必ずオラルメンテ認定協会の魔法使いが実行するべき!』みたいに、ガッチガチな規則を作らなくても……」
まだ働いたことはないけど、俺は、就職難な世界に生まれたディアの気持ち、分かる気がする。
母さんが前の会社を突然リストラされた時に、金や住まいがあることのありがたみが身に染みたもんな。母さんが無職だった期間、一日一食食べられない日もあったから。
「俺はそうそう言魂使いの力を使う気ないけど、他の言魂使いはどうか分からないし、本人が望むのなら、ディアにオラルメンテ認定協会の仕事手伝ってもらってもいいじゃん」
「バカも休み休み言うなり!本当に君は、どうしてそうノンキなりかっ」
タマはキレた。真っ赤な顔をして。
しまったな。言魂使い初心者(という言い方も変かもしれないけど)の俺が口を出すべきじゃなかった。




