◆
こっちに背を向け、ディアは冷めた声で言った。
「上達したな、魔法。君は自分のことだけ考えていればいい。私のことには口出しするな」
「そういうわけにはいきません……!あなたのしていることは……!」
瑞希ちゃんは必死にディアの腕を引く。まるで、彼の妹みたいに。
「魔法使いの君には分からない。私の立場など……!」
彼女の言動に腹を立てたのだろうか、興奮したディアは瑞希ちゃんの腕を強く払いのけた。
瑞希ちゃんは、そんなディアの反応を予想していたとでも言うように冷静だったが、俺はただならない気持ちになる。どうしてディアは、そこまで強く彼女を突き放したんだろう?そんな風には見えないが、二人は元々仲が悪かったのか?
「すまない。だが、もう、私に関わるな。まあ、二度と会うことはないだろうが……」
立ち尽くす瑞希ちゃんと目を合わせることなく、ディアは青い光をまといどこかに消えてしまった。
彼は何者だったんだろう。結局、あっさり退いた。瑞希ちゃんが来たから?とはいえ、あんなにさっさと逃げ帰るか?あんなに俺を敵視してたのに?
響が無事だったのは嬉しい。こうなって喜ぶべきなのは分かってる。
けれど、それ以上にモヤモヤが残る――。
しばらく目を覚ましそうにない響を保健室に連れていきベッドに寝かせた後、俺はタマと一緒に瑞希ちゃんの待つ屋上に上った。
久しぶりの登校を果たした俺だけど、とても授業に出る気にはなれず、一時間目をサボることにした。
「さっきはありがとう」
俺は、彼女にディアのことを訊いてみた。
「あの男の人、瑞希ちゃんの知り合い?あ、言いたくなかったら無理に言わなくてもいいよ」
「大丈夫ですよ」
言葉の気丈さとは裏腹に瑞希ちゃんはフェンスに指を絡め、心細げに眉を下げる。
「ディアさんは、私より三つ歳上の幼なじみなのです。昔は二人で、一流の魔法使いになるんだ~って言い合いながら、よく冒険ごっこをして遊びました。ディアさんは、昔から真っ直ぐで努力家で、強くなるための勉強や薬の調合を誰よりも頑張ってみえました」
「そうだったんだ。じゃあ、やっぱりディアも魔法使いなんだね」
出会い方があんなんだったから、よく知らない相手なのに、瑞希ちゃんの知り合いなのに、つい、ディアと呼び捨てにしてしまう。




