表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オラルメンテ コンフリクト  作者: 蒼崎 慶
63/143


「まあいい。わたしは私で、するべきことをするだけだ」

 男は言い、次の瞬間、光の速さでひびきに近づいた。

「……!!」

 何をしたのだろう?男の動作が全く見えなかった。

 何らかの方法で響を気絶させると、気を失った彼を片手で自分の肩にかつぎ上げ、男は飛び去ろうとした。

 さっき俺の手をにぎっていた響の両腕が、力なく男の背中にぶら下がる。

「いきなり何するんだ!響を返せ!」

 俺は男に向かって叫ぶ。

 これは異常事態だ。それをますます実感させられたのは、ポケットに入れていたスマホ付属ふぞくのタマがしゃべった時だった。学校では絶対話さないと言っていたのに、

「ついにこの時が来たなりよ!君が口にしたことが、今、実現する……。あの男は、言魂使い(オラルメンテ)の発した言葉の実現化を助長する存在なり! 」

「そんな!もう少しで響と仲直りできるところだったのに!遅かったのか!?」


 響がいなくなってしまうのか!?

 俺が無責任に発した感情まかせなセリフのせいで……!


 タマの声を聞いていたのか、男の雰囲気は威圧感を増す。苛立ちをひた隠しにし、鋭い目で俺を見つめていた。

「ふん。言魂使いを導く者オラルメンテ・グイダーレも一緒とは珍しい。先が思いやられる」

「アイツの挑発に乗ってはダメなり!」

 タマが、俺を優勢にしようとアドバイスをくれる。

「響君を助けたいのなら、心から強くそう願い、あの男に言葉をぶつけるなりよ!」

「させるか!私も雇われてここに居る。悪く思うな……!」

 言い終わらないうちに男は手のひらをこっちに向け、響を担いだまま強風を起こした。これが、瑞希みずきちゃんの話に出てきた『攻撃魔法』というやつなのか!?


 中庭をまんべんなく照らす夏の日差し。

 ここ渡り廊下にもなまぬるい風が漂っていたのに、それも一瞬で消えた。

 暑さなど感じなくなるくらい冷たい風が全身に吹き付ける。『涼しいな~』なんて余裕たっぷりな気分は、最初の5秒で消えた。

 やっぱり、この男は魔法使いなのか!?響を肩に抱えながらこんな力を使うなんて、普通じゃない。宙を飛んでることからして、あり得ない。


永音ながと氏、早くするなり!」

 タマの叫び声も、強風の音に消されてしまいそうだ。鼓膜こまくにダメージを受けているのか、耳が痛い。

 響を消すな!

 そう叫びたい。

 でも、風が冷たすぎて、唇が動かないんだ。まるで雪山の中で遭難そうなんしたみたいに、体が言うことを聞かない。日常生活で出来そうなことでたとえるなら、冬の風呂上がりに冷風のドライヤー百個分の風を全身に当てられてるみたいな感じだ。

 足で踏んばり抵抗してみるものの、どんどん後ろに押されていく。

 よく見ると、半袖カッターシャツから伸びた腕の皮膚ひふに、うっすら氷のまくが張り付いていた。空気中の水蒸気が凍ってしまうほど冷たい風を受けてたのか。どうりで、外気にさらされた肌がピリピリするわけだ。


 俺はとうとう、渡り廊下の壁まで押しやられてしまった。

「くっ!」

 無力な人間相手に使う力じゃないだろ、これは。卑怯ひきょう過ぎる!

「全て、言魂使い(オラルメンテ)のお前が望んだことだ。今さら取り消すわけにはいかない。言葉には責任を持つことだな」

 青装束の男が、淡々(たんたん)と言う。

 悔しいけど、ホントその通りだ。全然言い返せない。


 止まない冷風を受け続けるには限界がある。

 七月とはいえ、寒さにやられ体力をかなり消耗しょうもうしてしまった。

 俺は、転がるようにして尻からその場で座り込むはめになった。


 どういう仕組みか知らないけど、コイツは本気で響を消すつもりなんだ……。先日俺が放った言葉通りに。


「永音氏……!しっかりするなり!死んだらダメなりよ!」


 タマの声が遠くなる。

 意識が途切れそうだ……。

 響のことも心配だけど、俺の命もあとどれだけもつか分からなくなってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ