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『永音さん、怯まないで……!』
頭の中に、瑞希ちゃんの声が聞こえた。幻聴……ではないらしい。魔法か何かでエールを送ってくれてるのかな?
『聞こえているようですね。永音さんの再出発が気になり、水晶でそちらの様子を映し出してしまいました。勝手なことをして、本当に申し訳ありません……』
瑞希ちゃんのマジックパワーには相変わらず度肝を抜かれるけど、今はすごく心強い。
『私にもいずれ、今の永音さんと同じ緊張感を味わう時が訪れます。魔法学校を休学してこちらの世界に来ましたから、修行を終え次第、いつかは復学しなくてはなりません。なので、永音さんの今のお気持ち、深くお察しいたします』
そうなんだ……。瑞希ちゃん、いつかは、自分の世界に帰っちゃうのか。当然だよな。魔法学校のことはよく分からないけど、学校を休んで修行に来てる以上、仕方ないことだ。そう思うのに、この時なぜか、胸の奥がツキンとした。
『永音さんのクラスメイトの方々は、久しぶりに会う永音さんにどう接して良いのかが分からないのでしょう』
瑞希ちゃんが、諭すように言った。
『皆様、永音さんを拒否しているわけではありません、堂々としていてください。永音さんは何も悪いことはしていないのですから』
そっか。そうだよな……。
ありがとう、瑞希ちゃん。俺は、人よりちょっとデリケートな男子。それだけだ!
瑞希ちゃんの水晶通信に勇気をもらった俺は、
「おはよう。響って、今どこにいるかな?」
出入口からいちばん近い席の男子に声をかけた。
「多分、昇降口だよ」
おっかなびっくり気味だけど、無視せず答えてくれる。男子は言った。
「望月君が来なくなってから、響君、毎日のように昇降口で望月君を待ってたみたいだし……」
頭皮が逆立つ感じで頭が熱くなった。そうだったんだ。響は、そこまで俺のことを……。全然知らなかったよ……。
「ありがとう!」
教えてくれた彼に礼を言い、俺は昇降口まで走った。予鈴が鳴る。ユイと俺は、すっかり響と行き違いになっちゃってたんだな。
昇降口手前の渡り廊下。中庭の常緑樹が揺れる静かな音と、響の足音が重なった。
響は急ぎ足で教室に戻ろうとしていたらしいが、俺の姿を見るなりピタリと立ち止まった。瞬く間に緊迫感が漂う。
充分に心の準備はしてきた。そのはずなのに、やっぱり少し、恐かった。




