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オラルメンテ コンフリクト  作者: 蒼崎 慶
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 望月永音もちづき・ながとの名前で生活することに慣れてきた。

 母子家庭になって最初の危機が訪れたのは、俺が小学六年の時。


 それまで母さんが正社員として勤めていたプラスチック製造工場は、日本人従業員の首をどんどん切っていった。その理由は、外国から来た人を中心に雇用すると決めたから。

 解雇かいこまぬがれ会社に残れたのは、役職のある一部の男性社員だけ。ウチみたいに母子家庭の母親でも冷たく切り捨て、会社は安く雇用できる外国の人を次々に雇い始めた。

 理不尽すぎるリストラ。大人の事情なんてよく分かっていない小学生の俺ですら腹が立ったんだから、母さんや母さんの同僚はもっといきどおりを感じ、絶望していたに違いない。

 母さんは失業保険に入っていたけど、失業保険のお金を受け取れるのは仕事を辞めた三ヶ月後なのだと、役場の人に冷たくあしらわれた。

 すぐにもらえなきゃ、保険の意味ないじゃん!


 会社の理不尽さに腹を立てたり、効率の悪い失業保険制度に文句を言っているヒマはない。母さんをはじめ、他のリストラ対象者は、生活のため、すぐに次の仕事を見つけなくてはならなかった。


 母さんは接客業が苦手だと言っていたので、派遣会社を通して、再び製造業に従事することとなった。

 すぐに仕事が見つかって良かったのかもしれないけど、無理がたたったのか、新しい仕事に就いて一ヶ月後。母さんの体には結石けっせきが出来、一週間仕事を休まなければならなくなった。

 結石は、チョコの食べ過ぎや水分補給があまりできていない人、睡眠不足やストレスなど、様々な要因が重なってできるものらしい。

 ひとりで俺を養わなくちゃならない現実は、リストラされた母さんにとって大きなストレスになっていたんだ……。

 結石自体は重い病気じゃなく、病院で適切な処置を受ければ早く回復するらしいけど、その苦しみは尋常じんじょうじゃない。

 結石は腎臓じんぞうにできる。結石が小さくなるまではかなり痛いらしく、母さんは一日中布団でうめき、汗を流していた。病気知らずの明るい母さんがそんな風になる姿を見て、俺は衝撃を受けたしショックでもあった。


 このまま放置したら、母さんは死んでしまうのかもしれない。


 不安になった俺は、学校を休んで母さんの看病をした。

 医者にもらった薬以外、何も食べられない母さんはお茶だけを飲み、ぐったりした顔で、

「学校休ませてごめんね。永音は優しいね」

と言う。

「当たり前だよっ」

 他にできることなんかなくて、俺はひたすら母さんの背中をでたり、ひたいのおしぼりを替えることで不安をごまかした。


 もし、母さんがこのまま死んだら、俺はどうなるんだろう?別れた父さんに引き取られるのかな?いや、それはないか。父さんは、俺の養育費すら出してくれない人だ。離婚の時、裁判所から言い渡された月三万の養育費を出さない人が、自分の子を引き取ってくれるはずがない。

 じゃあ、母さんが居なくなったら、俺は、ひとりぼっち?


 涙をこらえた瞬間、俺の耳にインターホンの音が響く。来客。相手はひびきだった。


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