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胸が熱くなる。そんな風に言ってもらえるなんて……。
「それに、『友達』というものは、頻繁に顔を合わせることのみがパターンではありません。物理的に離れていても、お互いを想えば強くなれますし、会う気があればいつでも会える。私はそういうものだと思っていますよ」
「そうだよね。……ありがとう!なんか、元気出てきた!」
まだたっぷりとグラスに残ったレモンスカッシュを一気飲みし、俺は立ち上がる。
「念願叶って学校通えるようになっても、また、ここに来るよ。俺も、瑞希ちゃんの魔法使いの修行、応援してる!」
お互い、頑張ろう!
勢いよく外に飛び出した俺の背中に、魔法少女の力強い励ましが飛んだ。
「永音さんの願いは清いものです!自信持ってください!」
宣言通り、俺は三ヶ月ぶりに学校の制服を着た。懐かしいような気恥ずかしいような、妙な感覚。最後に着た制服は学ランだったけど、今は夏だから、上は白のカッターシャツ、下は夏用の黒いズボンだ。
自室で全身鏡をチェックし、エリや髪を整える。
私服でだらけるのに慣れていたせいか、久しぶりの制服は窮屈だった。いい感じに気持ちを引きしめてくれる。
「忘れ物はないなりか?」
「ああ。タマこそ、ここに残らなくていいの?学校では一言もしゃべれないんだぞ?」
「大丈夫なり。ミーは上級言魂使いを導く者。永音氏は大船に乗ったつもりでいるなり」
「いざって時は頼むよ」
通学カバンの外ポケットに入れたスマホ。今日もタマは、ストラップのフリして俺と行動を共にするのだ。
俺達が家を出る時、母さんが夜勤から帰ってきた。母さんは、制服を着た通学スタイルの俺をお化けでも発見したような目で見て、
「永音、どうしたの!?」
「今まで、理由も言わず学校休み続けてごめん。心配かけたね。でも、もう、逃げない。多分、大丈夫だから」
「無理してるんじゃないわよね?永音の気持ちがそれで落ち着くのならいいけど、つらかったら、いつでも帰ってくるのよ」
母さんが、俺を抱きしめる。
こうされるのは何年ぶりだろう?
懐かしい温もりに触れ、思い出す。俺が不登校になった頃、母さんが買ってた本のタイトル。
『我が子を守るために』
『不登校の背景に見る子供の闇社会』
母さんなりに、俺を守ろうとしてくれた。そんな母さんには絶対話さないと決めていたけど、学校に行かなかった理由、いつか笑い話として軽いノリで打ち明けられる日が来るといいな――。
「行ってきます!」
朝の始まり。
人生再生に関わる大切な一歩を踏み出した。
玄関を開け外に出ると、
「やっと来たね!」
セーラー服姿のユイが、そこに居た。もちろん、彼女の着ている制服も夏バージョンだった。
久しぶりに見るユイは、最後に会った時よりますます綺麗になっていて、腐女子の欠片もなかった。背中に伸びたツヤのある髪から、甘い匂いがする。
俺は逃げるようにユイの前を歩いた。




