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「その水晶、スマホよりすごいなぁ。材料やレシピまで収まっちゃうなんて。俺も、それ一個ほしいよ」
「永音さんにならあげてもいいですよ。なんてね」
冗談を言い合い、俺達は笑う。さっきまでのぎこちない空気がウソみたいだ。
「あのさ、俺のことも呼び捨てにしていいよ」
「えっ?」
「だって、友達にさん付けされるのちょっと照れくさいし、瑞希ちゃんは年下っぽいけど俺よりしっかりしてるしさ」
それに、魔女っコを服従させる趣味はない。二次元大好き人間でも、そこはわきまえている。
「友達なんだし、対等に付き合いたいんだ、瑞希ちゃんとは」
「対等に、ですか?」
瑞希ちゃんは、顎に手を当てしばらく思案顔をした後、
「私は十四歳になります。永音さんは……?」
さっきの占いで、俺の年齢までは見ていなかったらしい。
「十五だよ。中学三年生。やっぱり、瑞希ちゃんは年下だった。さん付けなんて、しなくていいよ。そういうの、俺あんまり気にしないし」
「いえ!言魂使いの方を呼び捨てにするなど、言語道断です!私の両親やご先祖様に知られたら、罰を与えられます!」
「ばっ、罰!?」
俺ごときを呼び捨てにしたくらいで!?ウソだろ?
瑞希ちゃんの家系の価値観、地球とはずいぶん違うんだな。
「俺は、気にしないんだけどな」
「いいえ。永音さんのお気持ちは嬉しいのですが、それだけはできませんっ」
聞き分けの良い素直そうな子なのに、名前の呼び方に関してはとことんこだわる瑞希ちゃんである。
魔法使いには魔法使いの、言魂使いには言魂使いの思考パターンがあるんだな。一般的人類として生きてきた俺には、ピンとこない。でも、
「つらい時にめげてしまわないよう、励まし合えるようなお友達が欲しいという願いは叶いましたし、これから永音さんと親交を深められることだけで充分、私は光栄に思います」
なんて言われたら、
「わかったよ。瑞希ちゃんの思うままにしようか」
俺は、自分の名前を彼女に『さん付け』されることを快諾するしかなかった。




