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オラルメンテ コンフリクト  作者: 蒼崎 慶
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 引きこもりになる前、俺はいたって平凡な学校生活を送っていた。それなりにクラスに溶け込んでいたし、仲の良い親友もいた。好きな人だって、いた……。


 今年の4月。

 中学三年になった俺は、親友の桜井響さくらい・ひびきと同じクラスになれたことで、進級早々テンション高く喜んでいた。

 響は照れくさそうに、

「俺も嬉しい。高校も、一緒のとこ行こうな」

「無理だって。響と俺じゃあ、脳スペックが違いすぎるし!」

永音ながとは、そこそこ出来る平均タイプだもんなぁ。今から俺が家庭教師に立候補しようか?」

「んー。ちょっと悔しいけど、そうしてもらった方がいいかもなぁ」


 俺達の仲の良さは、学校中が知っていたと思う。

 学力レベル平均そこそこ、いつも騒がしく馬鹿ばかな俺と、何でもソツなくこなす器用なイケメン響。いろんな意味で、俺達の組み合わせは目立っていたらしい。人目を引くのは、完全に響なんだけどさ。


 小学校入学したあたりから、響とはよく一緒にいた。

 好きな食べ物もだいたい同じだったし、面白いと思うゲームの種類もよく似ていた。

 顔や性格が違っても、俺達はよく、周りから『似てる』と言われた。俺達二人の雰囲気は近いものがあるんだろう、と、勝手に解釈した。


 体育祭やマラソン大会の順位にも、響と俺の名前は連なった。一位はだいたい響。二位は俺。

 よく、クラスの男子達から「響と一緒に行動してるとヘコまね?」とかれたけど、俺は「そんなことないよ」と返した。本心だった。俺は俺、響は響だからだ。

 たしかに、勝負事の場合、僅差きんさで負けると悔しいし、「クッソ、次は勝つ!」と叫んだりもした。マラソンでも、障害物競争でも。


 それでも、響は大事な友達だ。

 お互いにお互いをいちばんに考えられる、そんな関係。




 小学四年の時、俺の親は離婚した。母さんに引き取られることになったので、俺の苗字みょうじ善積よしづみから望月もちづきに変わった。

 自分でも変な感じがしたから、クラスの皆はなおさらそうだったんだと思う。

 当時、俺の苗字が変わったと説明する担任に、皆は言った。


「永音君の苗字は、なんで変わったんですかー?」


 子供独特の素直な質問も、あの頃の俺にはけっこうキツいものがあった。そこに悪意はないと、知っていても。


 呼ばれ慣れた苗字から、母親のせいに変わる。違和感とはまた違うし、そんな一言では足りない何か。これは、経験した人にしか分からない感覚なのかもしれない。


 ざわつく皆を前に、担任はオロオロするばかりだ。無理もない。

 でも、心の隅で、先生ナイスフォローしてくれないかな~って、ちょっとだけ期待していた俺。


 当分、苗字のことで皆から質問攻めされるのかな。

 憂鬱ゆううつ気分を吹き飛ばしてくれたのは、響の力強い言葉だった。

永音ながとは永音だろ!皆、騒ぎすぎ!今日からちょっとリニューアルするだけだよ。な?永音」

「そうそう!リニューアルしただけだからっ。これからも、望月永音をよろしく~」


 響が居てくれたから、俺も冗談ぽくそんな返事ができた。もしもひとりだったら、どんどん暗い気分になってた。



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