表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オラルメンテ コンフリクト  作者: 蒼崎 慶
42/143


 そんな危ない薬を、いつ誰がやって来るか分からない店内で調合するなんて、瑞希みずきさんもデンジャラスな人だなぁ……。でも、文句を言う気にはなれず、不思議と和んでしまう。瑞希さんは一生懸命努力してるんだろうな。魔法薬の調合を成功させるために。

「普段はめったにお客様が来ないので、油断してしまいました」

 照れたように、瑞希さんはうつむく。なんだか可愛いな。ちょっとドジ属性のある妹みたいだ。



 末森すえもりさんといい、タマといい、瑞希さんまでもが変わったプロフィールの持ち主だと分かった。

 BL(ビーエル)好きな女友達ならいたけど、そっちの方がまだリアリティーあるよな。『女子』という言葉が一般化してしまうくらいだし。

 俺ももう、人のこととやかく言えないか。タマいわく『言魂使い(オラルメンテ)』だし。



 「末森さんから永音さんのお話を聞いて、一度お会い出来たらと思っていました。こうしてお話しできて、とても嬉しいです」

「はい……」

 ……んん……。なんか、急に眠たくなってきた。

 瑞希さんがここに来た経緯にも興味があるし、彼女が魔法使いだっていう証拠をもっと見てみたい。緊張しながらも色々話したかったのに、俺のまぶたはどんより重くなってきた。

「永音さん――」


 瑞希さんの声が遠くなる――。もしかして、イチゴシャンプーの匂いの煙を吸ったせい?瑞希さんの心配通り、悪い作用が出ちゃったのか?


 俺は、テーブルにす形で眠りこけてしまった。

 深い眠りに引き込まれた俺の耳に、すぐそばで行われる二者の会話など入るわけがなかった。

望月もちづきに何をしたなりか!?」

「タマさん……。そちらのストラップに宿ることにしたのですね。大丈夫です。永音さんはすぐに目を覚まします。ひどく緊張されていたので、リラックス効果の高い薬を少々、紅茶に混ぜさせていただきました」



 けっこう長い間眠っていた気がするのに、店内の時計を見ると一時間も経っていなかった。

 ゴツゴツしたテーブルの感触を頬に感じ、俺はハッとおもてを上げる。

「寝ちゃってたのか……」

 寝不足とかじゃないのにな。

 目をこすりながらテーブルの上を見ると、俺が口をつけたモンブランの皿やティーカップは綺麗に片付けられている。元から置いてある水晶玉の透明さ加減が、やけに美しかった。


「気持ち良さそうに眠ってみえましたね」

 奥のカウンターから、瑞希みずきさんが出てきた。

「すみませんっ、話の途中で勝手に寝ちゃって」

「いいえ、気にしないで下さい。おくつろぎ頂けて、こちらとしてはむしろ嬉しいくらいですよ。目覚ましに、何かお持ちいたしますね」

「いえ、もういいです。さっきもケーキとかごちそうになったばかりなので」

 俺は、買い物客ではない。引きこもりを引退するべく、外出慣れするためにここへ来ただけなんだ。

 昨日は、成り行き上タマ(ストラップ)を買ったけど、下手へたしたら今日は何も買わずに店を出るかもしれない。それなのに、色々気を遣わせるのはかなり申し訳ない。


 そういえば、いつの間にか、全身に絡み付くような緊張感が抜けている。さっきに比べ、気楽というか。瑞希さんと普通に接することができている。寝起きだから気が緩んでるのか?


 いらないと断ったのにも関わらず、

のど、渇きませんか?空調も付いていますから」

 瑞希さんは温かいミルクティーをれてくれた。

「ありがとうございます。いただきます」

 自分で思っていた以上に、体は渇いていた。ひとたびカップに口をつけると、液体の口触りに爽快感を覚える。喉を通過したミルクティーが全身にしみわたるようだ。


 俺の向かいに座ると、瑞希さんは水晶玉に片手をかざした。さすが本業の占い師だ。さまになっている。

「永音さん。今、何か悩んでみえますか?」

「そっ、そう見えるかな?」

「ええ。来店時からずっと難しい顔をしてみえましたし、寝言にならないうめき声を発していました。ほとんどの時間気持ち良さそうに眠ってみえましたが、一時いっとき、ずいぶん苦しそうでした」

「そ、そっか……」

 寝ていたとはいえ、俺はどんな状態だったんだ!?人前だとすっごい気になる。どうか、変なこと口走ってませんようにっ。


「あの、もしよろしければ、永音さんのことを占わさせていただけないでしょうか?」



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ