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ユイは響の告白に即答せず、
「しばらく考えさせて?」
一ヶ月ほどひとりで考える時間を求めた。
じっと返事を待つまま、春休みに突入。響は、
「フラれるだろうなぁ……。覚悟はしてたけど」
と、毎日弱気で、さらには真面目な顔でこんなことを言い出した。
「ユイは、小学生の時から永音のことが好きだったと思うし」
「そんなわけない。もしそうだったら、とっくの昔に好きとか言われてただろうし」
俺は、響の話を否定し、まともに聞かないようにした。もし本当に、ユイが俺を好きだとしたら、フラれる親友の前で、俺はユイと両想いなのだと喜ぶことになる。
響がユイに告白すると決めた後になってようやく自分の初恋に気付いた俺は、自分がどう動くべきなのかをまるで分かってなくて。
響への嫉妬心。ユイに対する独占欲。人を好きになる喜び。初めて知った色とりどりの感情を無視し『今まで通りの自分』を保つのに、俺は精一杯だった――。
久しぶりにたくさん話したせいで、口周りの筋肉が疲労している。
おおまかな事情を話し終え、俺はため息まじりにタマを見た。
「結果から言っちゃうと、うまく感情をコントロールできなくなって、俺は引きこもることになったんだ」
「なるほど。結局、ユイちゃんと響君はイイ感じにまとまってしまったなりね。親友よりも遅れて恋を自覚した君は、響君だけじゃなく、ユイちゃんにまで裏切られたような気持ちになり二倍のショックを受けた……。そういう解釈でいいなりか?」
「微妙に違うけど、そういうことかもしれないなぁ。
俺は一体何だったんだ?あの二人にとって、俺は邪魔者でしかなかったのか?って、思ったよ」
「極めて情けないなりね」
「なっ……!」
傷心の失恋者に向かって、ひどすぎるだろ!
反論しようと前屈みになる俺に意見する間を与えることなく、タマはビシッと言い放った。
「君は、感情のコントロールを出来なかったと言ったなり。でも、ミーから言わせてみれば、言魂すらコントロールできていない、未熟な言魂使いなりよ!
君は気付いてないかもしれないけど、君が親友に捧げた応援のセリフが、元々恋仲になるはずのなかった響君とユイちゃんを結びつけてしまった可能性が高いなり!つまり君は、自分の招いた結果から逃げてるだけ。これを情けないと言わずして何と表現するなりか!?」
「しょうがないじゃん!あの時は自分が言魂使いだなんて知らなかったし!だいたい、俺ごときにそんなチート的能力が使えるなんて、いまだに半信半疑なんだからっ!」
言い返しつつも、俺はタマの指摘に揺り動かされていた。ううん、『タマの指摘に揺り動かされたから言い返した』っていう方が正しいかもしれない。
響は言っていた。ユイは俺のことが好きだって。そうだったら嬉しいなという感想を心の隅に芽生えさせつつも、そこまでうぬぼれ屋じゃない俺は、それが『響の一時的なマイナス思考による彼の間違った観察』だと決めてかかっていた。




