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中2になって少し経った頃、学年の女子の大半が男性アイドルグループに夢中なのだと知った。某事務所出身の5人グループのメンバーなんて全員イケメン過ぎて、悔しさを覚える気にもなれない。
誰がどこどこの駅で目撃されたーとか、誰々はあのメーカーの香水を使ってるーとか、夏休みにコンサートに行くんだーとか、昼休みに女子達のしている会話といえば、イケメンアイドルや好きな男のタイプに関することばかり。それについては別に何とも思わなかったし、男子は男子で美少女アイドルのグラビア雑誌や流行りのマンガ、面白いゲームについて盛り上がっていたから『お互い様』って感じでクラスの光景を見てた。俺がモヤモヤしてしまったのは、ユイまでもが男性アイドル話を楽しんでいる場面に遭遇したからだ。
ユイにとって、イケメンアイドル(または俳優)は脳内BLカップリングに欠かせない重要な人材である。憧れを抱いたり、ましてや妄想疑似恋愛をする相手ではないはずだ。なのに、なんで、ああも色めき立った表情でアイドルの生写真を見てるんだ!響も同じ考えだったらしく、「ホント、ユイは変わったよな」と、寂しげな顔で俺の席に来る。俺は響への同調を強調するかのように頬杖をつき、
「BL話聞かされてた頃はいつまで続くんだ~って飽き飽きしてたけど、今は、あの日々がちょっと懐かしいよ」
「最近のユイは、本屋に行っても、BLの本は買わずに、普通の女性ファッション誌とか、恋愛の詩集買ってたしな」
幼なじみの響ですら、ユイの変化にまだ慣れないようだった。いや、幼なじみだから、だろうか?
響は沈んだ声で言う。
「ユイにツッコミ入れたり、三人で釣りしに行ったり、前は当たり前だったのになぁ。そういうこと、また三人でやりたいなぁ。ユイと永音と一緒にさ……」
「そうだな。俺もそう思うよ」
ユイと響と、三人で。
男と男と女の、ちょっと変わったメンツだったけど、失くして初めて、それがどんなに楽しかったのかを思い知った。
ユイだけじゃなく、響と俺にも変化が訪れていた。それは、足音も立てずにひっそりと……。




