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タマは、言魂使いが能力を使うことの危険性について語った。
「言魂使いが人を殺めると、その代償として、一週間ほど頭痛に襲われるなり。鎮痛剤や病院での処置も効かない、ひどい苦しみを伴う頭痛なりよ。吐くこともある。でも、それはあくまで“レベルの高い言魂使い”の場合」
「レベルとかあるんだ。ゲームみたいだ」
「あるなりよ。ただ、ゲームと違うのは、『レベル上げなんてできない』ということ。ここ、重要な話なり。
レベルの低い言魂使いが言魂の力を使って人を殺そうとすると、相手を殺せる代わりに自分の命をも失くすなり。
言魂使いのレベルは生まれつき決まってるのに、それを知らなかった昔の言魂使い達は、自分達の能力は万能なんだと信じて疑わず、感情のまま他人を殺そうとして、不本意に命を落としていったなり……」
あとね、と、一言挟み、タマは続けた。
「能力を使うと、言魂使いの背中には、白くて丸い模様が浮かび上がるなりよ。模様がたくさんできると、それは夜空に浮かぶ星座のようにも見えるなり。君の背中には、2つの大きな模様と、無数の小さな模様が刻まれているなり……。
しつこいようなりが、大事なことだからもう一度言うなり。君の背中の模様は、能力を…言魂を使った証なり。『動かぬ証拠』というやつなりよ」
白い模様!?証拠!?だから、さっきタマは俺の背中を念入りに這っていたのか!
にしても、いつの間にそんなものが!?
俺は、近頃見ていなかった全身鏡の前に立ち、恐る恐る、着ていたTシャツを脱いだ。
「……ホントだ、ある」
全身に寒気が走る。鳥肌が立った。
タマの言った通り、鏡に映る俺の背中には、無数の小さな模様と、大きな2つの模様がついていた。白い模様が刻まれた、夜空に浮かぶ星座みたいな背中――。痛みや痒さなど、全く感じなかった。いつ、出来たんだろう?
「知らず知らずのうちに、言魂の能力っていうのを使っちゃってたんだな、俺は……」
納得するしかないよな、これは……。まるで、完全犯罪を狙っていたのに思わぬところから事件の証言者が現れ有罪判決を下されることになってしまった極悪犯罪者のような気分だ。
罪悪感に近い、それでいて、自分を庇いたい心境だ。名を付けるのが難しい感情の中で、俺は今までの自分を振り返った。
無数の小さい模様。それはきっと、ギャルゲーをプレイ中に「〇〇ちゃん(お気に入りキャラの名前)のハッピーエンドルートが見たい」と呟いた時についたものだろう。
小さい模様についてはあまり深刻に考える必要はないようで、タマもさほど気にしていないが、大きい模様に関してはそうはいかないらしい。




