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「言魂使いは、口にした願いを何でも叶えてしまう。その想いの強さが大きければ大きいほど、言魂使い自身に跳ね返ってくる痛みも大きくなるなりよ。痛みというのは、薬にたとえると副作用みたいなものなり。これは、君が知っておかなくてはならないことなり」
俺の背中から出てくると、タマは憂鬱そうな面持ちで再び過去の話をした。
「昔、気にくわない相手を言魂の力で抹殺しようとした言魂使いがいたなりよ」
「そんな……!殺すって、そんなのヤバいよっ。いくら気にくわないからって!」
「こことは違う世界での話なり。言魂使いの大半は、当然のようにそんなことを考える時代だったなりよ。昔は、法整備も充分ではなかったし、人々の倫理観も、現代ほど確立されていなかったしね」
「そうかもしれないけど、でも!」
反論する俺の言葉を遮るように、タマは言った。思い詰めた顔で、
「ただでさえ、言魂使いは人々から気味悪がられていた種族なり。ここでいう『人々』とは、無能力の人間のことを指すなりが……。
言魂使いは、その能力ゆえに変なウワサを立てられたり、何か悪いことが起きると全てに関して言魂使いに疑いがかかった。人々から嫌な言動を取られるのは当然のこと……。そのうちに、何人かの言魂使いは心を病んでしまったなり。結果、彼らの思考は二分した。ひとつは、他人に対し心を閉ざし自ら人里を離れる。もうひとつは、自分を敵対視する人々を皆殺しにする。殺される前に殺す。大半の言魂使いはそういう思考を持つようになり、また、『それが当然。自分を守るためだ。何が悪い?』という意識になっていったなり」
タマの話を、俺は自分なりに想像してみた。本当だったら恐ろしいなと思いつつ、心の半分では「ウソであってほしい。そんな恐ろしい話、ゲームやアニメの中だけで充分だ」と、冷静に考えてしまう自分もいる。というか、正直なところ、『冷静に考えてしまう自分』の割合の方が明らかに勝っている。どこかの世界で流行ってそうなファンタジー映画か何かか?
タマはやけに真剣な顔をしてるけど、やっぱりどう考えても俺の生活とかけ離れ過ぎている。どんな反応をしたらいいのか分からない。
ちょっとでも疑ってしまっている以上、「そんなのありえないって!タマの空想話でしょ」と、軽く受け流すのもひとつの対応なんだろうけど、真面目に語ってくれたタマに失礼な気がするから、さすがにそんなことは言えない。
「そっか。大変だったんだね」
感情を込めて言ったはずが、口に出すと淡々(たんたん)として、当たり障りのない返しになってしまった。それを、『リアクション薄い』と受け取ったのだろう、タマは呆れた目で俺を見て、深いため息をついた。
「他人事のような顔をして聞いてるけど、君にも関係のある話なりよ!?心して聞くなり」
「わかったよ」
最後までちゃんと聞こう。反論や個人的な感想は後回しにして。




