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俺は、非リア充なんかじゃない。
そうつぶやき、自分を奮い立たせる。
ウソではない。けっこう今の暮らしを気に入っているし、毎日が楽しいからな。
最初にギャルゲーを作った会社を尊敬するぜ。心底さ。
世の中では、俺みたいなヤツのことを『引きこもり』とか『ニート』と言うらしい。
大人になればなるほど生きにくい立場に追いやられる、と、問題視される、ニート、引きこもり。
幸い、ウチの母さんは、俺が学校に行かないことを理解してくれている。無理することないよ。そう言い、俺を家に居させてくれた。
普通の親だったら、部屋から引きずり出して学校に連れてくだろうな。
最初のうちは何も考えずこの状況に甘えていたけど、近頃、近所の目も厳しくなってきた。
市営の集合住宅。俺と母さんは、そこで二人暮らしをしている。
小学生の頃に両親が離婚して以来、母子家庭だ。
母さんは、毎日工場の夜勤をしているから、昼間は家で寝ている。
母さんが睡眠によって仕事疲れを癒している頃、俺は自室でゲームをするか、近所のスーパーまで買い出しに行くかの、どちらかである。
少しでも、母さんの負担を軽くするために、やれることはなるべくやった。家事や、日用品の買い出し。ローテーション式で行われる近所の掃除当番以外は、全てこなした。
そんなのは親孝行でも何でもなくて、単なる自己満足なんだってことを、近所のおばさんに思い知らされた。
「永音君、今日も買い出しに来たの?偉いわね」
「はい。母の代わりに」
「そう。でも、学校お休みしてるんでしょう?大丈夫?永音君のお母さんも心配してると思うわよ」
「……失礼します」
まだ何か言いたげなおばさんを無視し、俺はバクバクする心臓で家に戻った。
登校拒否を始めて一週間目。
スーパーの駐輪場での出来事だった。




