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瑞希ちゃんは、空になった遠田さんのカップにマメにミルクティーを注ぐ。その度、心配そうに俺を見ていた。きっと、もどかしいのだろう。言魂使いの力を使ってササッと解決してあげれば遠田さんも楽になれるのだから。
分かってるけど、心の治療をするのだから、流れ作業みたいに簡単には行いたくなかった。
その後も俺は、遠田さんに向けて色んな話題を振ってみた。世間話にちょうど良いと言われている天気の話や、芸能人のこと。でも、やはりと言うべきか、遠田さんの反応は薄くて。
こうなったら最終手段を取るしかない、と、俺は決めた。
この話題になら、きっと食いついてくれるに違いない!
俺は、あらかじめ用意しておいたポータブルゲーム機と、あのゲームソフトをカバンの中から取り出し、遠田さんの傍に座った。
久しぶりに引っぱり出してきた、超有名人気ゲーム。スイッチをオンにし、オープニング画面を映す。遠田さんの意識をこっちに向けるため、わざと音量を大きくした。
「実は、このボスが倒せなくて……」
俺は遠田さんに相談するような口ぶりで、
「アイテム消費ハンパないし、レベル上げもあまりやってないから仕方ないんですけど、もう、投げ出しちゃいそうです。レベル上げる前に途中で死ぬから、先に進めないし」
なんてのはウソだ。俺はこのボスまでクリアしたことがある。全クリ(全てのステージをクリア)した黄金データを断腸の思いで消去し、遠田さんと再会する今日この日まで、一からやり直していたのだ。




