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「あの、望月永音といいます。これからも時々ここでお会いすることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします」
自己紹介。本当なら、瑞希ちゃんは俺のことをお客様としてではなく店員兼占いアシスタントとして遠田さんに紹介したかったらしい。でも、俺はそれをやんわり却下し、普通にありのままの自己紹介をさせてほしいと頼んだ。
占いアシスタントと言えばかっこいい感じがするけど、俺は占いの知識なんて全く持ってないから、もし何か専門的な質問をされたら困るし、占いは瑞希ちゃんの専売特許だ。俺ごときがアシスタントを名乗るなんておこがましいと思ったんだ。
それに、遠田さんと話すキッカケをつかむためには、同じ客同士の方が壁を作らせないのではないかと、個人的な考えがあった。
俺のプロフィールを耳にし、遠田さんはうなずく。こちらの話は聞いてくれているようだ。
やっぱりまだ、人と関わるのが怖いのだろう、俺と瑞希ちゃんの目を見ず、しきりにミルクティーを口にしていた。遠田さんのカップだけすぐ空になる。
熱々のミルクティーをすぐに飲み切ってしまうくらい、極度に緊張しているんだろうな。俺も、その気は分かる。初めてここに来た時の俺は、末森さん相手に全身から嫌な汗をかいてしまうくらい、ガッチガチだった。
かと言って、このままにしていたら遠田さんは帰ってしまう。俺は意を決して彼に話しかけることにした。
「この店、居心地いいですよね。俺も、初めてここに来た時すごい緊張してたんですが、今は雑用なんかもやらせてもらうくらい、入り浸りです」
「…………」
やっぱり、返事はない。大好きな親友とあんなことがあったら、誰にも気を許したくなくなるよ。
でも、それでもここに来てるってことは、遠田さんはこの店を気に入ってるってことだ。少なくとも、嫌な場所にはこうして足を運んだりしないだろう。前の俺みたいに、ストレスのほとんどない家にこもったりする感覚でさ。
それが分かってるんだから、ここは、俺がどんどんリードしていかなくちゃな!




