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店内の拭き掃除をする瑞希ちゃんを手伝いながら今後のことを考えていると、待ちに待った遠田さんが店の扉を静かに開けた。
店員みたいな俺の行動(掃除中)に驚いたのか、遠田さんは一瞬目を見開くと、中に入るか入らないか迷う仕草を見せたが、
「遠田さん、こんにちは!」
という瑞希ちゃんの爽やかな挨拶に引き込まれるように、店に入ってきた。
その瞬間、ビシビシ伝わってきた。俺の存在を拒絶する、遠田さんの心が。他人と関わりたくないんだろう。胸が、また、ヒリッと痛んだ。
「永音さん、お客様なのに手伝って下さりありがとうございました。お茶にしましょう」
「うん、そうだね」
俺は普段通りの対応。掃除用具入れに雑巾をしまいカウンター裏で手を洗わせてもらった後、丸テーブルの席についた。テーブルを挟んで遠田さんと向き合う位置に腰をおろす。
三人分のミルクティーを各テーブルに置いた後、瑞希ちゃんは俺の隣に着席した。彼女がイスに座った時、ふわりと甘い香りがしてきてドキドキしてしまったのを、正面の遠田さんを見ることでごまかした。
「遠田さん。この方は望月永音さんと言います。先日から、お店の雑用などを手伝って下さるお客様なのです」
「………………」
カップに視線を落としたまま、遠田さんはうなずいた。




