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「世の中には、味方ばかり存在するわけではありません。言いがかりをつけて攻撃してくる人もいます」
瑞希ちゃんは、話す。
「私も、魔法学校に通っていた頃、魔法能力を持たない0の人達から化け物呼ばわりされたり、剣で切りつけられそうになったことがあります。ディアさんが助けてくれたのでケガはせずに済みましたが、あの時初めて、人の悪意を怖いと思いました。私が攻撃魔法を充分に使えない平凡な者であることなど、0の方々は知りようがなかったのでしょうから仕方がありませんが……」
「そんなことが……」
瑞希ちゃんが無事で本当によかった。
でも、本当に、ひどい話だ。瑞希ちゃんの味わったことも、さっきこの店を出ていったあの人が受けた出来事も。
「あの人の名前、訊いてもいい?」
助けたい。その一心で、俺は尋ねていた。
「遠田将門さんと言います。永音さん……」
瑞希ちゃんは救いを求めるように俺を見つめていた。
「俺、決めたよ」
ここ数日迷ってた、人助けの件。
もう悩まない。
言魂使いとして、俺は……。
「遠田将門さんに会わせてほしい。この力で、彼を助けてあげたいんだ」
「ありがとうございます!そのお返事を待っていました!!」
瑞希ちゃんはキラキラした目で立ち上がり、俺の両手を強く握った。その瞳は、夏の海に太陽の光が照りつけている景色を連想してしまうほど瑞々しくて美しかった。
遠田さんが『言魂』に来たのは、それから一週間後のことだった。
それまでの間、俺は毎日店に行き、いつ遠田さんが来てもいいよう、朝から閉店間際まで店の中で瑞希ちゃんと過ごした。
俺を待たせるのが申し訳ないと言い、瑞希ちゃんは遠田さんを電話で呼び出そうとしてくれたんだけど、あいにく、彼女は遠田さんのケータイ番号を知らなかったので、呼び出すことは出来なかった。




