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「勝手なことをしたと思います。永音さんの許可も得ず……。あの時は本当に申し訳ありませんでした。怒りましたか?」
ボブヘアを頼りなげに揺らし、瑞希ちゃんは不安げにこっちを見つめる。
「ううん、全然怒ってないよ。あの人にも効果出て良かったね」
実験台になったかいがあるというものだ。怒るなんてとんでもない。瑞希ちゃんは人の心を救うために頑張ってるだけだし、悪気はないって分かってる。
それに、彼女は今まで色々と助けてくれた人だ。リラックスの薬を飲んでなかったら、俺は今ここにいなかったと思うから。
「薬、自信作が出来たらいつでも実験台になるよ。死なない程度に」
「ありがとうございます」
不安そうだった瑞希ちゃんの顔はみるみる輝き、可憐な笑みを浮かべた。かと思えば、次の瞬間、彼女は大きなため息をつき、萎んだ花のような声音でこうつぶやいた。
「あの人も、永音さんのように本来の自分を取り戻して下さるといいのですが……」
「あの人の、本来の自分?」
「はい。薬にばかり頼るわけにはいきませんから。あの人も、昔の自分は明るい性格をしていたとおっしゃっていました」
「いつから、今みたいな感じになったの?」
「中学入学の頃だそうです。当時彼には、自分の健康や学校の勉強よりも大事にしている物があったのです」
「宝物?」
「はい」
瑞希ちゃんは、某有名キャラクターゲームのタイトルを口にした。
「それ、知ってる」
俺も、そのゲームで友達と対戦したり、入手したアイテムを交換し合ったりして、楽しんでいた。
発売当時は無名のマイナーゲームだったけど、俺らの世代を中心に、大人にも受けが良く、瞬く間にメジャーになったんだ。
引きこもりになってからはすっかりギャルゲーマニアになり、そういう普通のゲームをやらなくなった俺でも、今、そのソフトを渡されたら、寝る間も惜しんで集中プレイしてしまうだろう。やってみたらその面白さが必ず分かる!
それまでゲームに興味のなかったBL好きのユイまでもが、俺や響なみに夢中になったゲームだもんな。




