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他の客を見るのは、これが初めてだ。
俺と同い年か、年下に見える男子。やや幼さの残った優しそうな顔立ち。
彼は、俺が席についてもこちらに目を合わせることなくずっとうつむいていた。不登校のコかな?引きこもってた時の俺と似たオーラを感じる。
そういえば、末森さんが言っていたな。ここには、普通の生活を外れた人が多くやってくるって。この人も、末森さんに声をかけられてここへ来たのかもしれない。初めてここを訪れた時のことを思い出し、俺はそんなことを考えていた。
末森さん、自分から気になった通行人に声をかけてここに連れてくるとか言ってたし。
瑞希ちゃんがコーラを出してくれたのと同時に、その人は席を立ち、無言で店を出ていった。
「ありがとうございました。また来てくださいね」
瑞希ちゃんの挨拶も、空調の聞いた店内でむなしく消える。
瑞希ちゃんからコーラ入りのグラスを受け取り、俺は尋ねた。
「今の人、常連さん?」
「はい。常連さんと言うほど多くはいらっしゃいませんが、永音さんがこちらに通われるよりずっと前から、時々来て下さる方です。
あれは、私がこのお店でお世話になり始めたばかりの頃の事でした」
瑞希ちゃんは、今出て行った男子について話した。
「彼は、中学卒業後、定時制の高校に通っていたのですが、クラスの人とうまくいかず、先日に高校を辞めたと言ってみえました」
「高校を中退……。あの人、俺より年上だったんだ」
てっきり、タメかと……。
「そうですね。彼は童顔でいらっしゃいますものね。でも、永音さんより1つ年上ですよ」
「ってことは、高校辞めたのも最近ってことになるね。無口そうな人だったけど、俺が来たらまずかったのかもしれない。あの人、瑞希ちゃんの占いをしに来たのかもしれないし……」
「いえ、問題ありませんよ。彼はいつも、ここでただ静かな時を過ごすのが好きだとおっしゃっていました」
それはそれで、俺、邪魔しちゃったんじゃ……。他の客が来たら静かとか関係なくなるもんな。




