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「永音が驚くのも無理ないわよ。母さんだって、初めてその話を父さんから聞いた時、思わず笑ってしまったもの。それに、父さんだって、この話を信じてなかったっぽいわよ」
「そうなの!?」
俺はめちゃくちゃ信じてますが!!とは言えず、話の続きを聞く。
「でも、今思えば、父さんは言魂使い伝説を信じていたのかもしれない。本人がそう言ったわけじゃないけど、母さんはそう思うのよ。
父さんって、言葉に気を使わない人だったじゃない?労りの言葉もかけてくれなかったし、むしろその逆で、無神経なセリフばかり吐く人だった。どうしてそこまで言えるの!?ってくらい。永音にもそれでつらい思いをさせたし、母さんも、若い頃はそれで何度も泣かされたわよ」
ホント、息子ながらに呆れるぜ、そんな男が父親だなんて。
「父さんは、自分の家系に言魂使いの血が混ざっていることを不気味がっていたのよ。普通の人はそう思ってしまうわよね。自分の言葉が現実のものになってしまう、そんな力が使える種族の末裔だと聞かされたら、父さんみたいになってもおかしくないかも。
『ホラ見ろ!俺は乱暴な事ばっか言ってるけど何も起こらないだろ!?』父さんはそうすることで、自分は言魂使いの血を継いでいないと思い込みたかったんじゃないかしら」
「そうかもしれないけど……。もしそんなことを知ったら、俺だったら言葉に気をつけるけどな。父さんのようにはなりたくない」
「うん。永音はそう言うと思った」
母さんはホッコリした笑みを見せたけど、俺の心境は複雑で、とても、つられて笑う気にはなれなかった。
俺には父さんの言動が理解できないし、今の話を聞いてますますその想いは強くなった。




