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じゃあ行ってくるよと外に出ようとした時、
「永音!」
「なに?」
母さんに呼び止められた。
「出かけるのって、急ぎの用事?」
「ううん、約束してるわけじゃないから、急ではないけど」
「じゃあさ、ちょっと朝ごはん付き合ってよ。どうせ寝れないし」
「うん……」
こうして母さんと食事をするのはいつぶりだろう。
夜は俺一人だし、朝は朝で、母さんは寝てるか風呂だから、めったに一緒に食べない。もうずっと、こんなことなかった気がする。
眠れないという母さんに付き合い、俺はキッチンのテーブルについた。母さんが向かいに座る。
チーズトーストと目玉焼きを、俺達はどちらかともなく口にした。
「永音にね、ずっと話していないことがあったのよ」
「えっ?急にどうしたの?」
改まった口調でそう言われ、俺はちょっとドキッとした。ホント、急にどうしたんだろう。普段楽天的で明るい母さんが、こういう空気をまとうことはめったにない。記憶の限りでは父さんとの離婚以来だと思う。
「永音も、もう十五歳か。月日が経つのは早いわね。この前までこんなに小さかったのに」
母さんは両手で赤ちゃんを抱くしぐさをした。
「大きな病気やケガもせず、よくここまで大きくなってくれたわね。……もう、話してもいい頃よね」
ちょっと恥ずかしくなるな。反応に困る前置きをして、母さんはぽつぽつと語り始めた。
「今まで、話すべきか隠し通すべきかずっと迷ってたんだけど、永音が父さんの血を継いでいる以上、やっぱり話しておかなきゃと思ってね……」
心臓が跳ねるかと思った。母さんが話そうとしているのは、もしかして……。




