とある新米旅人の紙片
『どうやら、無限と表現しても差し支えない程に広大なこの世界は、小説よりも奇な事実に溢れているらしい』
これは、私の尊敬する大先輩の言葉だ。
昔とある旅人が、旅先の酒場で酒のつまみに旅した話を居合わせた奴らに語ると、「作り話にしても面白い」と好評だった。
その旅人は、行く先々で旅先の話を聞かせても好評なので、ウケが良かった旅の話を一冊の旅行記にまとめて、試しに人に売ってみることにした。
自分のいる「国」と「地域」しか知らないこの世界の大抵の人間にとって、異国の話は何よりも興味を惹かれることらしく、良い値で売れたそうだ。
噂によると、彼の書いた旅行記は、家一軒分と同じ値段で取引されたこともあるらしい。
この話を偶然旅先で知り、私は冒頭の大先輩の言葉がふと頭の中をよぎった。
私も同じ旅人として、この先人に倣い、旅行記を書き綴ろうと思い立って、これから旅先の話を書き綴ろうと思う。
次からの白紙のページに、私は果たしてどんな話を記すことになるのだろうか。
この物語はオムニバス形式であり、この紙片を書いた人が主人公だとか、次回の話の人物と同一人物とは限りません。