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暁降
夢と現の狭間をたゆたう
境の分からない
何も見えない空間に
ただひたすらに身を任せる
それはとても楽で
でも 怖くて
体を抱くようにしてしか出来ない所作
ギュッと目を瞑って
突き付けられている闇が
通り過ぎるのを
ただ待つ
それは身震いするような栄光で
でも 名誉の負傷を伴う
体をさらけ出すことでしか得られない歓喜
星星の輝きが焦燥感を掻き立てる
曖昧でないことが
先の見えないレースへの参加を強要する
誰かのノックが聞こえて
薄く開いた眼に
閉じゆく世界の残滓がちらついた
静かに
確実に
更けてゆく
一体いつまでここにとどまらなければならないのか
何故
どうして
答などないと分かっていても
人としての小さな尊厳が
帰郷を妨げる
永遠とも思えるこの刹那
そこに使者が降り立つ
暁降―!
鮮やかな朱色が眼前に迫る
翼をもぎ取られるような感覚
夜の帳がおりてくるまでの束の間の休息
闇が僕をふうわりと誘った
(明日全てを失うとしても一片の魂は残るだろう
だから安心して眠るがいい)
誘うその手に
冷たい箴言への最後の接吻を施して。
堕ちゆく僕の瞳映った世界は
異形の美しさに満ちていた
賽は投げられたのだ。




