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静謐の人
彼はいつだって真っ直ぐに立っている
あまりに大きくて
あまりに美しく
あまりに貴い
彼の周囲に嵐はない
彼は唯一人
無風の中で歩を進める
彼はいつだって目を開いている
あまりに遠くまで
あまりに静かに
あまりに的確
彼に見えぬものはない
彼は唯一人
万里の先にて世界を観る
彼の生き様はただひたすらに孤高
彼へ助けの手を差し伸べることの出来る者はおらず。
彼と共行くことが出来る者もおらず。
彼は唯一人
天辺に座す
その孤独を理解しようとするものはおらず。
その重さを抱きしめようとするものはおらず。
ただ彼のみが彼の唯一の友でありつづけた
美しく切ない
彼の祈りの物語は終わることはない
終わらせることの出来る者も
その初めを知るものもいないのだから。
故に彼は生涯、静謐に生きる法となった




