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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 8
88/90

日英同盟復活

-鎮守府-


「会議中失礼します。亡命イギリス政府より、日本外務省に宛てた電報を傍受しました」


ハワイに設置された太平洋情報部隊所属の将校が対米上陸作戦を検討していた作戦室に入室した。


「何だ?」


「は、『亡命イギリス政府は貴国日本帝国に対し、講和の用意がある』だそうです」


作戦室に居た者は全員が驚いた。


「長官、どういう事でしょうか?」


参謀の一人が山本に尋ねる。


「大方、アメリカを信用できなくなったのだろう。アメリカは自国防衛の為に軍を本国に引き返させた。その隙を突いたドイツ軍がイギリス本土を占領したのだからな」


イギリス本土はアメリカ兵の本国送還や空襲の対応などでごたごたしている最中にUボートで静かに上陸した少数の特殊部隊がレーダー基地を占領・破壊し、防空の目を奪われたイギリスに対して大量の兵員をロンドンに空挺降下。電撃占領したのだ。


「この特殊部隊の指揮官は言わずと知れているがな。君達の艦の中にあった資料にあったドイツ人で、こんな特殊作戦を実行できる人間は一人しかいないからな」


作戦の調節の為に来ていた影鎖に山本は言った。


「ええ、そうでしょうね。あの男以外、こんな特殊作戦を成功させられる人間を私は知らない」




-ドイツ帝国 ベルリン-


「オットー・スコルツェニーSS中佐、貴君を対英戦争での戦勝寄与並びに特殊作戦従事と戦功を得た。よって、貴君に柏葉付騎士鉄十字章を授ける」


そう言って、ヒトラー自らが柏葉付騎士鉄十字章を授けたのだ。


「貴君の功績はこんな物では済まないだろうが、これも慣例なのでな。もっと戦功を立てれば、上の勲章を次々と授与させてやる」


「ありがとうございます。総統閣下」


そう言ってスコルツェニーはナチス式敬礼をする。柏葉付騎士鉄十字章を授与されるには騎士鉄十字章が受賞していなくてはならない。その騎士鉄十字章は参戦を要求しても一向に答えないフランコ将軍暗殺作戦成功で受賞している。今や、史実では中立を守り抜いたスペインもドイツ帝国の領土となっている。


「で、連続してすまないが君に特殊作戦をもう一度実行してもらいたい」


「はい。何でしょうか?」


「1ヵ月後、私はケールシュタインハウスにてムッソリーニと会見を行う予定がある。その最中に君の部隊は連合軍の軍服を着て襲撃してもらいたい。そして、ムッソリーニを殺してもらいたいのだ」


「何故ですか?一応は同盟国の人間ですよ」


「ムッソリーニは余りにも戦争に対する意識が低すぎる。だから、イタリアは最近邪魔に思えるのだ。だから、ムッソリーニは連合軍に殺されたとしてイタリアとその領土を丸々我がドイツ帝国の物とするのだ」


「は。了解しました」


スコルチェニーには、目の前の男が悪魔としか思えなかった。悪魔のような狡猾さ。悪魔のように戦略を立て、悪魔のように実行し、悪魔のように人々を欺く。


(この人は、まるでここに居て、ここに居ない存在のような。禍々しくも高潔に見える。一体、この男は何者なのだ?)


スコルチェニーはただ、ヒトラーの狂気に取り憑かれた作戦を実行しなければならない。それが、下に立つ、目の前の男の部下として居る自分の義務なのだから。




-日本 外務省-


「この内容は信用に値するのかね?」


外務省では、亡命イギリス政府の発信した対日講和の電報の裏を取るのに必死であった。


「駐スイス大使の阪本瑞男に駐スイスイギリス大使のデビッド・ジョージに確認するように伝えました」


「たった今、駐スイス大使より電報です。イギリス大使は公式に電報を認めたそうです。なお、交渉場所はオンタリオ湖トロント沖に停泊中のケンペンフェルトだそうです」




-首相官邸-


「近衛さん。我々はソ連侵攻と同時に総辞職を考えている。そこで、円滑な政権交代をすべく、今から少しずつ調節していきましょう」


小磯は近衛を官邸に呼び、政権交代に伴う混乱を最小限にすべく調節を始めている。その調節の最大の助言者となっているのが現在は近衛公爵付きの情報武官兼任となった林原である。


「そこで、まずは貴方に決めていただきたい。イギリスとの交渉に、誰を派遣しますか?」


「ここは、イギリスをよく知る人間が良いでしょう。そして、言うべき事を主張する人間を付けるのが望ましいですね」


近衛はそう言い、後ろに控えている林原を見る。


「誰か、良い人材は居ませんか?」


近衛はそう、林原に尋ねた。


「そうですね。私が思う最適な人材は吉田茂元駐英大使と、その彼に面識があり、英語も出来る白洲次郎が宜しいでしょう」


林原は意味深に近衛に答えた。近衛もその意図を察し、


「私もその二人が最適と思います」


っと小磯に伝えた。


「分かりました。直ちに手配いたします」




-カナダ トロント マルトン空港-


「チャーチル首相との会談とは、余り乗り気ではないのですが」


派遣された吉田はそう口にする。


「しかしここで講和をすれば敵が一つ減り、味方が一つ増えます」


白洲はそう吉田に言った。




用意されていたボートにて停泊中のケンペンフェルトに向かった二人は艦上にて儀仗隊の歓迎を受ける。そして、二人は士官用食堂に案内された。


「士官用食堂にて会談とは、考えましたね」


「なに。会談が終わった頃に料理を並べるのでな。この会談が終われば、我々は同盟国となるのだから」


「まだ、決まってませんけどね」


が、会議はすんなり進んでいく。はっきりと物事を主張する白洲により、会議は円満と進まないんじゃないかと心配していた吉田だったが、譲歩するところはし、主張するところは主張すると分別つけた白洲の言動等もあり、会議は予想よりも早く終わったのだ。


予定よりも早く終わった為に料理が運ばれてくるのが遅れてしまう。その為、料理が運ばれてくる間に締結式を終わらせようと甲板に出る。そこには、各国の記者団も居り、カメラの用意がされている。


「ではここに、日英両国の講和条約並びに同盟条約締結を宣言いたします」


吉田とチャーチルが握手を交わす。その瞬間にカメラは一斉にフラッシュを焚かれ、儀仗隊は空に向かって空砲を撃った。


ここに、日英同盟が復活したのである。

駐スイスイギリス大使は架空の人物です。もし、当時の大使を知っている方がいらっしゃるならば教えていただければ幸いです。モデルは映画『空軍大戦略』に登場するラルフ・リチャードソン演じるサー=デビッド・ケリーです。


この映画には何人か実在する人物が登場するのでサー=デビッド・ケリーも実在の人物かもしれませが。

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