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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
平成 7
80/90

時代

-鎮海-


「揚陸は進んでますかな?」


反撃部隊の内の一部隊司令官に着任した乃木希典は、鎮海に揚陸中の自軍部隊の装備を視察に来た。


「ハッ、順調に進んでおります。戦車や自走砲、トラックなどの車両も予定時間には終るものと思います」


「そうですか。それは良いです。では、任せましたよ」


「了解です」


兵は敬礼をする。乃木は答礼で返し、司令部へと向かった。


「凄いな。俺、あの乃木長官と話したぞ」


「ああ。けど信じられない。あれが、ロボットなんだからな」


「科学が進歩すれば、偉人すらもロボットになってしまうのか。偉人への冒涜という奴も出ているのかもしれないな」




-第三軍司令部-


装備拡大に伴い、本格的な軍編成が出来た日本軍は6個の軍集団を保有するに至った。その内の第1軍集団が反撃部隊の先鋒として朝鮮半島に派遣されている。


「第四軍司令官、野津武満のづたけみち大将のお見えですが」


「野津?」


乃木がそう聞き返したとき、ドアがノックされた。乃木が入室を許可すると、第四軍司令官の野津武満が入ってきた。


「曾お爺さんを覚えていてくれるとは。いえ、正確にはその記憶を入れられていたことに驚きですかな」


野津武満は日露戦争に従軍した野津道貫のづみちつら元帥陸軍大将を曾お爺さんに持つ軍人である。


「ええ。学習院での私の失態を助けてくれた事は今でも記憶に入っております。彼は、立派に軍務を果たしてくれましたか」


暫く談笑が続いた。野津自信も、殆ど話した事のない曾お爺さんの話が聞けて嬉しかった。


「さて、本題に入りますと。我々第一軍集団は2つに分かれ、釜山とここ鎮海に駐留しました。海軍は海上輸送の安全を保障してくれたので、物資や部隊の揚陸に支障は出ませんでしょう。後は、北上を開始するだけです」


机に広げられた朝鮮半島を中心とする日本の九州・中国地方、中国の上海までの沿岸部が書かれた地図を見ながら説明する。


「中国海軍は現在、主要港の舟山軍港は殆ど壊滅状態です。富嶽の攻撃で艦艇や潜水艦を90%以上損失しています。南海艦隊は消滅し、北海艦隊と東海艦隊は既に主要軍港を損失しているので消滅したも同然です。大連港に最後の空母が居ますが、これは活動できる見込みがありません」


「つまり、海上の安全はほぼ100%安全です。丹東空軍基地には爆撃機が展開しており、護衛機共々いつ飛んでくるか分かりません。なので、半島での反撃ではそれが危険といえます。新羅軍は既に富嶽が空軍を潰し始めていますから良いでしょう」


提供された1000機の富嶽は基本500機に分かれて朝鮮半島と中国本土を攻撃している。未だにレーダーに捉えられず、迎撃に来ても防御機銃の一斉射撃で撃墜される。両国の空軍と海軍は、これで殲滅された。


「戦略航空軍の威力を再び実感しました。船も飛行機も動いていない時に叩かれれば、無力なんですね」


「時代は変わりましたね。私の旅順戦で、戦車があれば1万人以上の犠牲が出なかったのに。それに航空機があれば、山の下から無意味な砲撃を行うのではなく、空から爆撃で無力化できたのに」


乃木は時代の進歩を実感している。学習能力を持つロボットだから、感心することも出来るのだ。


「時代も、水の流れと同じです。止まる事が出来ない。ただ進むしか出来ない。ただ、忘れてはならないのが、その時代が本当に人間が幸福であったかを考える事です」


「なら、今は不幸ですね。戦争という名の病気を発症した、不幸な時代なんですね」




-アメリカ合衆国 ホワイトハウス-


「大統領閣下、日本が朝鮮半島に上陸した模様です」


衛星が使えない為、海外メディアを通してようやくアメリカ大統領の耳にも伝わった。


「上陸して、3日目だそうだな。二年前には世界の動きを1時間の遅れも無く私の耳に入ってきたというのに。衛星がなくなった途端、3日も待たねば新鮮な情報が入ってこない」


ケンリー大統領は眉間に皺を寄せながら言う。世界に今まで君臨してきた筈のアメリカの落ちぶれにイラついているのだ。


「衛星がまるで反応しなくなってから2年。新たに打ち上げようとすると、発射の直前か発射後の空中で謎の爆発を起こし、未だに一発も打ち上げ成功が報告されません」


原因を究明しようとNASAをはじめとする専門機関が調査しても、全く原因が分からなかった。


「このままでは、大変な事になる。一基でも良いから、今年中に上げてみろ」


2023年、1月16日。この日にホワイトハウス前でデモが起こっていた。人種差別も絡めて、日本を見捨てた大統領へ対する批判であった。そして、この日に行われた理由はマーティン・キング・ジュニアの誕生日だからだった。

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