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ガダルカナル

-ハワイ-


「それで、ヨークタウンを失い、おまけに出撃した空母2隻も大破したのかね?」


ニミッツはスプルーアンス中将を呼び出して、ミッドウェー戦況を聞いていた。


「はい。見たこともないオートジャイロに襲われ、格納庫を攻撃。艦載機を全て破壊したあと、悠々と飛び去っていきました。」


「日本は、我々が待ち構えていたことを知っていたのかね?なぜ、索敵機も飛ばさずに、正確に機動部隊を捉え、確実に攻撃できたのか分からない。」


「無線も確りと封止していましたので、情報漏洩はありえません。」


「しかし、これでガダルカナルの航空支援は難しくなったな。今後、暫くは南太平洋が主戦場になるから、空母『ホーネット』だけでも投入したかったのだが。」


「それは、申し訳ありません。ホーネットは、エンタープライズと共に本国にて修理をしますので、再投入は、10月ごろを予定しています。」


「そんなには待てない。損害の少ないエンタープライズを戦線に投入できるギリギリのラインまで修理し、投入する。」


「しかし、それでは沈む可能性が高くなります。本職としては、賛成しかねません。」


「反抗作戦は、既に始まっているのだ。艦載機の数は整うから、投入は可能だよ。」


スプルーアンスは迷う。ここで、完全修理されていなかったヨークタウンがどんな運命を辿ったか話すべきか、やめるべきかを。


「君は、ホーネットが修理されるまで本国に居り、修理されたら戦線復帰をしたまえ。」


「分かりました。」


スプルーアンスは結局、納得せざるを得なかった。仕方がないと言えば仕方がない。本来、自分は後送されてもおかしくない状況なのに、ニミッツが後送を取り消したのだから。




-東郷-


「いい眺めですね。」


おおすみとしもきたは護衛艦群が取り囲んで護衛し、その28海里ほど後方を独立航空機動部隊が航行しているのだ。


「第一索敵隊が帰還しました。」


艦後方に、索敵機の97式艦攻10機が着艦体制に入っている。甲板は広く、ベテランなら4機を同時着艦させる事も可能な飛行甲板を持ち、カタパルトと通常発艦を使えば、同時に6箇所から同時発艦も可能な東郷。この時代で、いや、現代でもこれに勝る空母は存在しない。


「第二索敵隊が発艦しました。」


東郷の航空管制室では、管制員が誘導や指示を出して艦載機を行動させている。


「艦長、この南では、日米の激戦が繰り広げられるなんて想像できますか?」


「いや、想像できないな。こんな平和な、青空の下なのに、戦争やってるなんてな。」


「平成では当たり前ですが、ここでは、そうもいかないでしょう。」


「航海長。なんで、自衛隊に入った?」


「そりゃあ、日本を守るためでしょう。でも、実際は違った。自衛隊は、戦えない。ただ、アメリカの尻にくっ付いて政治絡みの海外派遣をされるだけ。艦長は?」


「私も、似たような理由だよ。そして、入って君と同じような感情を抱いたよ。そして、やめたいと思っていた。そんな中でこの空母の建造計画が上ったのだ。このチャンスに私は取り付き、推進してきた。お陰で、この空母の艦長になれたんだよ。」


「私も、この空母が造られているのを知ったときは驚きました。日本が、戦後体制から脱退できると、本気で信じました。そんな中で過去に飛ばされたんですから、日本を救おうと思った感情が、こんな所で実現できるとは思ってもいませんでしたよ。」


「まあ、分からんでもないが。」


暫く航行を続けた。ガダルカナルまで、あと2日程は掛かる。それまで、警戒を厳重にして航行しなくてはならないのだ。艦艇は居なくても、潜水艦は居る可能性が高い。なるべく、この空母が発見されるのを防ぎたいから、対潜、対水上警戒を厳重にして航行していた。




-ガダルカナル-


「既に、このガダルカナルにはラバウルからの航空隊3個中隊が進出し、ラバウルにも陸攻を中心とした戦力が待機しています。中間基地のブ島(ブーゲンビル島)は99式施設作業車で急ピッチの飛行場建設を行っております。それに、新たな戦力として新型戦車を16台に食料や増援部隊も2日後に到着すると言っています。」


160ミリ榴弾砲や、15式連装高射機関砲が飛行場の至る所に見られ、陸自隊員も見られる。


「兵等も、マラリアの予防接種を受けられて、戦いにも支障は殆どないでしょう。」


ガダルカナル守備体調の川口少将がお礼を言う。


「いえいえ、こちらも私たちの先祖を救えるのです。礼には及びませんよ。」


ガダルカナルに派遣された陸自隊長の島崎一佐が言う。


「ハマダラカの退治にも我々は協力します。それに、浄水車などで浄水された水なども提供するように言われてますので、後方支援はお任せください。」


さすがは陸自だった。災害救助などで経験を積んでいるからこの手の後方支援など朝飯前である。


ハマダラカ。マラリアの原虫を人に媒介する蚊の一種で、熱帯地方に多く生息している。日本でも、明治時代の北海道開拓時に多く見られたが、マラリアの原虫は現在では駆逐されて見ることは無い。


「食料の米はタイ米もありますが、殆どは古米ですよ。」


「米ならいいですよ。」


タイ米は現在の日本では敬遠される米で、古米は余った米のこと。古米は、現在の学校給食の米の大半を占めており、快く思わない生徒も少なくはないそうです(少なくとも、私は嫌いだった)。


そこへ、空襲を知らせる警報が鳴り響き、飛行場は慌しくなる。


「司令、敵の爆撃機が28機接近しています。」


「機種は?」


「不明ですが、双発機の事。」


「B25か26だな。」


島崎は報告を聞いて機種を予測し、


「高射砲、残らず撃墜しろ!!」


命令を受け、15式連装高射機関砲に着く。


「爆撃機視認。ファイアー!!」


全8基の高射機関砲は、上空に飛来したB26に40ミリ弾を浴びせ、機体を次々ズタズタにする。


「す、すごい!!」


音速機を撃墜するために作られた15式連装高射機関砲は300km程度で飛ぶ航空機なんて、蚊を落とすよりも簡単であった。結局、爆撃機は任務を果たせずにわずか2機だけが一目散に撤退していく。


「26機撃墜。なかなかの戦果だな。」


まだ、導入されて間もない機関砲の威力を見て島崎も驚いた。


「敵は機体の至る所に穴が開いており、ズタズタです。こんな高射砲、今まで見たことありません。」


「そうだな。これで、敵さんも爆撃を諦めてくれるだろう。」


しかし、この次の日に再び爆撃機が姿を現した。しかし、今度はB17による高高度爆撃の為、気休め程度の損害しか与えられる事は出来ず、飛行場に穴が開いても99式施設作業車が簡単に埋めるから、効果は一切無かった。


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