反撃の楔
-日本軍総司令部-
「各基地より、出撃用意が整った模様です」
壁一面に設置されている日本地図が描かれた液晶に各基地の状態が表示される。佐世保、呉、舞鶴と半島進攻部隊を乗せた船と護衛艦、そして空母艦隊の容易が調った。
「各飛行場からも、空挺部隊と護衛機部隊の用意が整ったようです」
液晶に表示されたデータを見ながら、北里は命じる。
「上陸部隊を出撃させろ。そして、上陸時間に合わせて、空挺部隊も降下させるんだ」
「了解」
陸海空と全てが連携する合同作戦が開始された。半島に対し、楔を打ち込む作戦が開始された。
-国家主席私邸-
「賈詡文和参謀、我が国に侵攻した同盟軍の撃退はどうなっている?」
献帝は私邸に軍事作戦総参謀の賈詡文和を呼んだ。
「私の作戦に嵌り、少しずつ犠牲を出しながらも進んできております。しかし、100%止める事は不可能です。万里の頂上を繋いだ事で、南から攻めてくる軍は押し止めましたが」
「北のモンゴルか」
「はい。流石、かつて匈奴と呼ばれ、ヨーロッパにも攻め入った国民の末裔だけあります。勢いは我が軍よりも圧倒的です」
歴史的に見ても世界一の大帝国、モンゴル帝国の皇帝チンギス・カーンの末裔達は、今でも頑強な、精強な軍を形成している。
「ふむ、やはりモンゴルに苦戦すると思ってはいたがな。こうも正直に来られると、厄介極まりない。何とか、止める手段を講じたまえ」
「はい。早急に、対策を練ります」
そう言って、賈詡は下がった。献帝は青島ビールを注いで、窓の所に行く。山の上から見下ろす北京市を見ながら、ビールを飲んだ。
「かつての王朝の王も、高い所から高級な飲み物を飲んで人民を見下ろして笑っていたものだ」
もう一度口につけ、ビールを飲み干す。
「低級な身分だった私が、今ではこの国の王。人民の犠牲など、恐れるに足らん。世界一の人口を持つ我が国にとって、人口増加はもはや止めたい。だからこそ、戦争を長引かせなくてはな」
再びテーブルの所に行ってビールを注ぐ。
「その為には、何としてでも硬直状態を作ってもらわねば」
今度は一気にビールを飲み干した。
-鎮海区-
この日、空襲警報が鳴り響いた。上空に、空母から飛び立ったF19が現れ、停泊中の新羅海軍艦船に攻撃を仕掛けた。
「母艦に通信。敵港湾施設攻撃完了。脱出できた艦船は無し。繰り返す、脱出できた艦船無し」
F19の中には、有人型も存在した。無人機ほどではないが、十分な空中戦性能お発揮できている。
「F15Kに、KF16のお出ましか」
新羅空軍の戦闘機が現れた。
「38機しか居ないか。それに、KF19が居ない。出し惜しみだろうか?」
KF19。現在、韓国が進めているKFXの完成機である。しかし、2018年の初飛行に失敗して現在は改良中である。
「まだ改良が終っていないのか。なら良いな」
F19は降下し、KF16は数分の内に始末できた。しかし、F15Kは一筋縄にはいかない。
「流石、元々空戦性能抜群のF15を対地攻撃用改造したマルチロール機だけあるな」
有人型F19は無人型と違ってアクロバット飛行に制限が加えられている。元々、航空機の性能は人間が耐えられる数値で出される事が多い。もし無人機なら、実際よりも格段に性能が向上するのだ。
「何とか落としたか」
苦労しながらも、ようやく仕留めれた。しかし、こちらも数機が撃墜されている。それに燃料にも余裕が無くなり始めている。
「生き残った全機へ、母艦に帰投する」
その後、数度の攻撃後に空挺部隊が降下して占領した。
-釜山-
「上陸部隊、出撃!!」
強襲揚陸艦と輸送船からホバークラフトが出撃した。LCACが戦車などの車両や重火器を揚陸させ、その後ろにホバークラフトで歩兵などの兵士や軽火器を揚陸する。
「未来から提供されたワスプ級強襲揚陸艦のお陰で、上陸作戦がより一層楽に出来るな」
ワスプからはヘリが援護の為に飛び立ち、対馬空港に展開している空軍の戦闘機部隊が援護している。釜山さえ押さえれば、南は取ったも当然である。
「釜山、鎮海。この二つを押さえれば南の重要都市を奪った事になる。そうすれば、ここを起点に北へ進んで行ける。鎮海は軍港として機能するし、釜山も鎮海も揚陸地として重要。だから、何としても押さえなくては」
戦車を揚陸させ、市街地へと進む。既に住民は居ない。無人の街で戦闘が展開された。
「K2だ!!」
角を曲がれば戦車2台が待ち伏せし、18式が破壊される。しかし、C4Iを利用して状況を後続車が読み取り、直ぐに2台とも撃破する。
「新型装備のお出ましだ」
18式の砲塔側面に装備されているランチャーから、偵察用ボールが撃ち出された。それらはある程度転がった後、リモコンにてキャタピラを動かし、装備されたカメラで状況を伝えてくれる。
「総員、情報端末装着」
合図と同時に、兵士全員が色の入ったゴーグルを掛ける。そこには、GPSなどを利用した戦場マップが表示されたり、先ほどの偵察ロボの見ている映像が表示されたり、別の兵士が見ている映像が表示されたりと戦場一帯を情報にて統合させた。
「全軍情報統合システム。ハイテク化の波に乗った、21世紀の戦闘システムだ」
現在、実用化できているのは日本を含めアメリカやイスラエルなどの極限られた国だけ。元の韓国や新羅には運用できない装備であった。
各車両、各兵士、更には艦船から航空機まで、あらゆる情報を統合して必要な情報を提供する情報システムは21世紀でようやく実用化できた。これで全ての情報を統合でき、作戦司令部からも迅速に命令を行き渡らせる事が可能になり、更には兵士・兵科同士の連携もスムーズに行える。
「右に敵部隊が居る。数は13。機関銃と突撃銃で武装しています。後方に味方が展開、同士討ちに注意」
そう言い、後方に展開した味方部隊と情報を交換し合い、角から攻撃を仕掛けた。偵察ロボが先行して情報を送ってくれる為、こちらの犠牲は最小限に抑えられた。
「旗を揚げれば、占領だ」
ようやく掃討を終えた日本軍は、国旗を市庁舎に掲げた。占領を示す国旗を掲げた。
そしてこれが、海外に戦後日本軍が初めて国旗を翻させた出来事となった。
実際のモンゴル軍は戦力、兵器共に精強と言うわけでは無い。戦闘機やヘリコプターは殆ど稼動できないし、戦車もまともな装備が無い。かつてのモンゴル帝国みたいな精強軍を持っていないのが悲しい。
また、実際の万里の頂上は北京の北にあるが、小説では南に移して書いている。あんな巨大建築物を移動させるなんてありえない!!なんて思わないで下さいね。
あと、ようやくハイテク兵器が書ける時が来た。待ってましたとばかりに書きました。他にも様々なハイテク兵器がありますよ。ラジコンみたいな小型無人偵察機や湾岸戦争でも活躍したGPSまで。
それに、現在の自衛隊は『ガンダム実現に向けて』のコンセプトに基づいたハイテク兵器類を出しています。よろしければ調べてみるのも面白いですよ。