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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 7
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平定の海戦 後編

-アイオワ-


「提督、敵艦隊をレーダーが捉えました」


アイオワに乗っているのは、レーダー射撃の第一人者アーロン・メリル中将だった。実際は、戦後に中将になったが、度重なる敗退で、少しでも将来性のある者はどんどん昇進しているのが、現在の合衆国の状態だった。


「了解した。敵航空機は?」


「いえ、未だ確認できません。敵は、単縦陣で接近して来ています」


「敵も、艦隊決戦覚悟なのか」



‐紀伊-


「敵艦隊を捉えました」


紀伊以下、戦艦7隻と護衛している巡洋艦など計30隻。アメリカは戦艦6隻と護衛している巡洋艦など合計36隻。戦艦の数では勝るが、相手の戦艦は全て砲口径40cmオーバー。対して、こちらは紀伊のみ。


「砲門数とレーダー射撃の精度が勝敗を分けるな。着弾観測機も上げておけ」


「了解しました」


紀伊に座上する山本は命じた。


「会敵は15分程度です」




双方が敵艦隊を視認できる位置まで接近した。そして、双方が着弾観測機を上げる。


「取り舵いっぱい」


日本艦隊が取り舵を切り、艦の右側を相手に向ける。


「面舵いっぱい」


当然、アメリカ艦隊は面舵を取って左側を相手に向ける。



ー紀伊-


「距離2万です。未だに、相手は砲撃をしません」


「なあに。敵はよっぽど紳士的だな。それでこそ、戦いがいのある相手だよ」


相手の先頭を行く艦から発光信号が送られる。


「『我、アメリカ合衆国海軍当艦隊指揮官アーロン・メリル中将。貴艦隊と戦えることを光栄に思う』だそうです」


「返信『我、日本海軍当艦隊指揮官、山本五十六大将。こちらも、貴艦隊と戦えることを光栄に思う』だ」


発光信号でそう、相手に返した。


「なかなか、紳士的だな。あの敵は」


そして、紳士的な戦いとは無縁の、ガチの砲撃戦を展開する。


「レーダー射撃、開始」


初撃は、双方が同時だった。そして、レーダー射撃の為に双方が至近弾を与える。


「誤差修正を急がせろ。着弾観測機からの情報も活用しろ」




「誤差、左12mだな」


そう送ろうとしたら、上空から機銃弾を受ける。


「畜生、向こうも着弾観測機が上がってたぜ。こりゃあ、のんびりと着弾観測してられんな」


零観だから、格闘戦では相手の着弾観測機に負ける筈がない。旋回して相手に機銃弾を返して撃墜した。


「しっかし、どんどん双方の観測機が落ちてくな」


横を見ると、撃墜された味方の零式水上偵察機が落下していく。


「早く終わらせてくれよ」




‐紀伊-


「第二斉射だ」


放った第二斉射は、敵の前から3番目の艦に命中弾が確認できた。


「敵、サウスダコタ級に命中弾。観測機より、2発命中との事。続いて、敵弾きます」


水柱が幾つも上がり、後方から爆発音がした。


「山城と榛名に命中弾が出ました。榛名は砲塔でしたのではじき返したそうですが、山城は第3、第4砲塔の間に命中。両砲塔とも、ターレットが曲がったらしく旋回不能です」


「撃てるなら撃ち続けろと伝えろ。曲がったぐらいじゃあ、戦闘力は落ちん」


紀伊に居る連合艦隊司令部要員も次々に指示を飛ばす。そして、混乱をしているのだ。


(やはり、現場に置かん方が良いのか)


山本はそう思う。現場で混乱が起こると指揮能力自体が低下する。それでは、折角現場に置いて、混乱を軽減させようとする意味が無くなる。


「長官、水雷戦隊が突撃を開始しました」



-大井-


「さーて、戦場の混乱発生は我ら水雷戦隊の独壇場になった証」


大井以下、水雷戦隊が猛スピードで敵戦艦群に肉薄する。


「喰らえ。この為に装備された61cm片舷20本の酸素魚雷」


大井は、水雷専用に61cm4連装魚雷発射管を片舷5基計10基も備えている。もし、史実でも艦隊決戦が起こっていれば、かなりの力を発揮できていただろう。


「後続の水雷戦隊も魚雷を発射しております」


敵の巡洋艦からの攻撃は重巡洋艦が牽制し、近づけさせない。


「命中確認、3隻が速力低下しているようです」


3隻の戦艦は速力を一気に落とした。内、1隻は傾きも大きくなってくる。


「1隻撃沈。あれはサウスダコタ級だな」



-紀伊-


「敵、サウスダコタ級戦艦1隻を撃沈。水雷戦隊は一時離れます」


装填の為に水雷戦隊は離れる。


「一気にけりを付けるぞ」


こちらも、既に金剛が速力を落として落伍し、山城は中央2基の砲塔を回せない。伊勢は後部砲塔2基を失った。


「実質、こちらは2隻分の戦闘力が低下しております。これで、ほぼ互角と見ていいでしょう」




-アイオワ-


「くそ。やはり、砲撃後に安定を取り戻すまで次の攻撃を出来ないのが大きい」


アイオワの弱点は、全長に対して全幅が短すぎることであった。その為、横方向の砲撃時の安定性に難がある。


「注排水システムを上手く使って安定させていますが、それでも砲撃後の数秒は安定しません」



-紀伊-


「日向と山城に命中弾。日向は無事ですが、山城は傾斜が激しくなります」


最後の砲撃が山城で行われた。放物線を描いて飛んだ山城の生涯最後の砲撃は、先頭艦への命中だった。



-アイオワ-


「艦傾斜角増大!!」


砲撃後の不安定なときに命中弾。艦が傾斜を始めた。


「注排水システムを使え」


「今ので、電気系統とポンプ室をやられました」


次の瞬間、前部砲塔が吹き飛んだ。傾斜によって装填台に乗っていた砲弾が落ち、それによって信管が誤作動を起こしたのだ。


「総員退艦!!」


この後は日本海軍の圧勝だった。指揮系統を失った戦艦はバラバラに離脱を開始。追跡してきた水雷戦隊が各個撃破した。逃げ切れたのは2隻の戦艦と18隻の巡洋艦・駆逐艦であった。



-紀伊-


「戦果発表。敵戦艦4隻他20隻を撃沈。我が方、戦艦1隻他12隻沈没。また、伊勢と日向、金剛は暫くの間は戦闘不能です」


「分かった。ハワイに戻るぞ」




数日後


-ホワイトハウス-


「今回の海戦で、戦艦は全て戦闘不能です。空母こそ無傷ですが、艦載機はほぼ壊滅。復帰は1年は少なくとも掛かるかと」


キングが大統領にそう報告する。


「分かった。下がりたまえ」


キングは敬礼をして、執務室を出る。ルーズベルトは受話器を取った。


「内務省のハルに繋いでくれ」


そう言った時、執務室にホワイトが入ってきた。


「閣下、お疲れでしょう。コーヒーをお持ちしました」


「君が直々に持ってくるとは驚きだな」


そう言ってコーヒーを一口飲む。そして、異変に気付いた。


「く、まさか。これは!!」


「はい。特製の毒薬です。お気に召しましたか?。脳内出血を瞬時に起こさせる特殊な毒薬でしてね。我々の計画を頓挫させようとしている貴方を止めるには十分な効果でしたね」


「ぐ、貴様。やはり、ソ連のコミンテルンか。」


「はい。では、安らかに眠ってください。この戦争は我々で幕を閉じますので」


大統領は椅子から落ち、もがき苦しんで死んだ。ホワイトは急いでコーヒーを片付け、証拠も消す。


「では、共産世界の為に死んでくれた大統領して、後世に伝えられる事を祈っております」


そう言って、ホワイトは執務室を出て行った。数時間後、大統領補佐官が執務室にて倒れている大統領を発見するのだった。

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